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Eric Clapton/『Clapton』 [CD]

Clapton_s.jpgソロ・アルバムとしては2005年の『Back Home』以来、スタジオ・アルバムとしては2006年にリリースされた JJ Cale とのアルバム『The Road To Escondido』以来となる Eric Clapton の新作がこの秋にリリースされると聞いた時、ジャケットの画像とタイトルを見て正直ちょっとガッカリした。

65歳になった自らの顔を大きく写したジャケットに新作のタイトルは自らの苗字『Clapton』だけ。当初これらはプロモーション用の素材なのでは…? とも思ったが、これが新作の公式なアートワークと判明。新作に対する期待度はさらに下がった。

さらにガッカリ感を後押ししたのが国内盤をリリースするワーナーミュージック・ジャパンでの紹介文「これはまさに大人のためのBGM」だった。Eric Clapton の曲を BGM 扱いか…。こんな紹介のされ方を当の Eric Clapton 本人は知っているのだろうか? あり得ないことだが、もし私が関係者だったら、こんな紹介文を考えた広報や営業はクビにしていただろう。

この新作に対する Eric Clapton 自身の言葉は公式サイトで動画で紹介されている。紹介をするならこういう本人の言葉を元にして欲しいものだ。

頼りない国内盤のセールス・トークは諦めて、この新作の情報をいろいろ調べてみると、全14曲で1時間余りの新作に Eric Clapton による新曲はわずか1曲のみ。他はスタンダードやブルースのカバー曲で構成されているとのこと。そうすると1994年の『From The Cradle』や2004年の『Me and Mr. Johnson』のようなアルバムなのか? とも想像は膨らんだ。

そうこう考えているうちに届いた新作の『Clapton』にはブルースとスタンダードのカバーがそれぞれ5曲ずつ収められ、他の4曲は JJ Cale の曲が2曲。そして最近活動を共にしている Doyle Bramhall II の曲が2曲あり、うち1曲はこのアルバムで唯一 Eric Clapton の名前がクレジットされた共作曲だった。

この新作に収録されたカバー曲の中には最近のツアーでプレイされた曲もあり、1曲目の『Travelin' Alone』は今年6月にアメリカのイリノイ州で行われた Crossroads Guitar Festival でプレイされ、JJ Cale の『River Runs Deep』は今年3月のジョージア州でのコンサートでプレイされている。

スタンダードな曲のカバーでは、1920年代の『Rockin' Chair』で Derek Trucks がスライド・ギターで参加。Eric Clapton のハスキーで枯れたボーカルの『How Deep Is The Ocean』は1930年代の曲で、終盤に Wynton Marsalis のトランペット・ソロもフューチャーされている。

続く同じく1930年代の『My Very Good Friend The Milkman』でも Wynton Marsalis は起用され、さらにこの曲ではピアノで Walter Richmond と Allen Toussaint のふたりによるプレイも収められている。

ブルースのカバーではシカゴ・ブルースで Little Walter としても知られている Marion Walter Jacobs の『Can't Hold Out Much Longer』があり、ここでは Kim Wilson のブルース・ハープが曲を盛り上げ、終盤で聴ける Eric Clapton のソロ・プレイも聴きどころだ。

また The Rolling Stones の『The Prodigal Son』の原曲(?)、Robert Wilkins のカバー『That's No Way To Get Along』では JJ Cale のギターとボーカルも収められている。

かつて Eric Clapton の恋人だった Sheryl Crow は Doyle Bramhall II の『Diamonds Made From Rain』で(控え目に)バック・ボーカルで参加。この曲は新作『Clapton』からの1stシングルにも選ばれている。

『When Somebody Thinks You're Wonderful』も1930年代の曲で、『My Very Good Friend The Milkman』でも聴かれた Fats Waller のピアノのパートを Walter Richmond と Allen Toussaint のふたりが再現している。

また1930年の曲で Lane Hardin のブルース『Hard Time Blues』では Eric Clapton がギターとマンドリンをプレイ。Doyle Bramhall II がスライド・ギターのソロを披露している。

そしてこの新作で唯一 Eric Clapton の名前がクレジットされた『Run Back To Your Side』では Doyle Bramhall II に加えて3人目のギタリスト Derek Trucks がスライド・ギターで参加している。この曲では他の曲と全く違った Eric Clapton の力強いボーカルも聴ける。この路線の曲がもっと聴きたいと感じる仕上がりの曲だった。

新作を締め括る『Autumn Leaves(邦題:枯葉)』はこのアルバムのプロモーションで他の曲を押しのけて取り上げられているが、前の曲『Run Back To Your Side』と比べると、その差にはちょっと驚いてしまう。

1945年にフランスでヒットした原曲に Johnny Mercer が英語歌詞を付けたバージョンがこの新作では元にされている。この曲では Paul McCartney や Mylène Farmer の最近のライブでお馴染みの大柄なドラマー、Abe Laboriel Jr が見事なブラシ捌きを披露している。

安易な BGM 扱いとアルバムの最後に収められた『Autumn Leaves』が妙に大きく紹介されている『Clapton』だが、個々の曲を詳しく紐解いていくと、もっといろいろな楽しみ方が見えてくるアルバムだ。国内盤の妙な紹介文に最初は拒否反応も示したが、聴いているうちにジワジワと面白さが染みてくるアルバムでもある。

Clapton
Travelin' Alone (Lil' Son Jackson)
Rockin' Chair (Hoagy Carmichael)
River Runs Deep (JJ Cale)
Judgment Day (Snooky Prior)
How Deep Is The Ocean (Irving Berlin)
My Very Good Friend The Milkman (Johnny Burke/Harold Spina/Fats Waller)
Can't Hold Out Much Longer (Little Walter)
That's No Way To Get Along (Robert Wilkins)
Everything Will Be Alright (JJ Cale)
Diamonds Made From Rain (Doyle Bramhall II/Justin Stanley/Nikka Costa)
When Somebody Thinks You're Wonderful (Harry Woods/Fats Waller)
Hard Times Blues (Lane Hardin)
Run Back To Your Side (Eric Clapton/Doyle Bramhall II)
Autumn Leaves (Joseph Kosma/Johnny Mercer)
▼:blues
★:standards


タグ:Eric Clapton 2010


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