Queen／『One Vision』

1985年7月の Live Aid 出演後、Queen は当初1985年の残りと1986年はオフにあてて、1987年に新しいアルバムのリリースとそれに伴うツアーを計画していた。しかし、Live Aid でのパフォーマンスに手応えを感じたメンバーは Live Aid の6週間後にミュンヘンのスタジオに集まり曲作りを開始。この時点で Queen の最も新しい曲は1984年11月にリリースされたクリスマス向けの『Thank God It's Christmas』が最後だった。

以前、紹介した『Queen Complete Works』によると、1985年11月にリリースされたシングル『One Vision』のレコーディングはこのようにして始まったとあり、「電話に出た Freddie はスタジオに戻って、すぐにレコーディングをしたがっていた」と、ベースの John Deacon は当時の状況を説明している。

続けて John は、「最後には全員がスタジオに戻って、次のシングルのレコーディングを始めた。Freddie のアイデアで一緒に曲を書いたんだ。僕は休暇中で合流が遅れたけど、その曲のクレジットは『Queen』となった。でも正直に言うとメインは Roger で、Brian と Freddie が曲の大部分を書いたんだ」と、この曲のできた背景を同書にて明かしている。

1986年に Roger Taylor が語った内容によると「『One Vision』のオリジナルは Martin Luther King Jr についてであって、誰かが Bob Geldof についてだと言っているようだけど、それは違うね」と、コメントしている。

Brian は『One Vision』の PV について、「レコーディングの最中をドキュメンタリーのようにずっと撮ってみることにした。それはとても珍しい決断だった」と、2003年のインタビューで答えている。Roger はこの当時の状況を「本音では撮っている連中はどっか行ってくれと思っていたよ」と、振り返っている。

このドキュメンタリーの撮影には1982年のオーストリア・ツアーの頃に出逢った Rudi Dolezal と Hannes Rossacher が任され、2年後の1987年には『The Magic Years』というかたちにもなった。ふたりの最初の仕事が『One Vision』で、この PV は『Bohemian Rhapsody』のリリースから10年目ということもあり、『Bohemian Rhapsody』にもあった4人の表情から1985年当時のメンバーの表情に変化するシーンが PV のイントロに収められた。

Queen が1985年に唯一リリースしたシングルの『One Vision』は全英チャートで最高7位をマーク。7インチ盤の『One Vision』は4分の短いバージョンだったが、12インチ盤には6分半に及ぶ extended vision が収録され、後にアルバム『A Kind Of Magic』に収録された『One Vision』は5分11秒のバージョンだった。さらにアメリカでリリースされたベスト盤『Classic Queen』には4分半のバージョンが収録された。

『One Vision』について Brian は、「かつてバンドがやっていたことに戻った曲」とも解説している。

Queen は『One Vision』のセッションの前に映画監督の Russel Mulcahy と『Highlander』という映画のサウンドトラックの話をしていたが『One Vision』は『Highlander』に使われることなく、全く別の映画『Iron Eagle』に使われた。

1986年7月にリリースされた通算11枚目のスタジオ・アルバム『A Kind Of Magic』の1曲目に収録された『One Vision』は、その後に行われた Magic Tour でもオープニングの曲に使われ、その時の模様はビデオ『Queen at Wembley』でも見ることができる。

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