The Doobie Brothers／『Farewell Tour』

初期の代表曲『Listen To The Music』から後期のヒット曲『Minute By Minute』まで全部で17曲が収められ、1983年に2枚組の LP としてリリースされた The Doobie Brothers の初のライブ盤は『Farewell Tour』というタイトルで、惜しくも最後のツアーの模様を収めたアルバムだった。

このライブ盤は CD として1990年に日本だけでリイシューされ、この CD ではオリジナルの LP にあった曲間の MC もそのまま残されていたが、その後、長いこと廃盤の状態にあった。

ようやく2008年に Rhino から久々にリイシューされた『Farewell Tour』だったが、このときは終盤2曲の始まる前にオリジナル・メンバーの Tom Johnston を紹介する Patrick Simmons の MC がまるごと削られていたそうで、購入する際にはいつのリイシューなのか確認が必要だ。

The Doobie Brothers は Michael McDonald の加入前後でその音楽スタイルが大きく変化して、ファンもこの時期を境目にして分かれるようだが、このライブ盤ではその2つの時期の曲がとてもうまく並べられ、ライブ盤だが The Doobie Brothers のベスト・アルバムとしても楽しめる構成になっていた。

このライブ盤に収められた曲はカリフォルニア州の Universal Ampitheatre、Irvine Meadows Ampitheatre、Hearst Greek Theatre の3か所で行われたライブから選ばれていた。

この Farewell Tour に参加した The Doobie Brothers のメンバーは、Patrick Simmons と John McFee のツイン・ギターに、Keith Knudsen と Chet McCracken のツイン・ドラムを軸に、ベースが Willie Weeks、キーボードが Michael McDonald。そしてサックスやオルガンを担当する Cornelius Bumpus にパーカッションの Bobby LaKind を加えた8人構成で、終盤の『Long Train Runnin』と『China Grove』の2曲でオリジナル・メンバーの Tom Johnston が加わり、9人の大所帯が一同に揃うステージだった。

このライブ盤にある17曲のジャンルはとても広く、Michael McDonald 在籍時の AOR な雰囲気の『What A Fool Belives』があれば、インストルメンタルな『Steamer Lane Breakdown』ではカントリーな雰囲気をたっぷりな楽しめる。LP 時代のC面にあった4曲、『You Belong To Me』から『South City Midnight Lady』は The Doobie Brothers のカントリーな面が一番よく表れていた。

ライブ盤のトップを飾る『Slippery St. Paul』を除けば、LP 時代は各面に4曲ずつが配され、その4曲ずつにいろいろな時期の The Doobie Brothers を象徴する曲がうまく並べられ、とても飽きさせない構成の見事なライブ盤だった。

ここにある16曲を聴くとバンドとして軸がないように感じるかもしれないが、その根底には The Doobie Brothers らしいリズムというものがあり、不思議な統一感も感じられた。

ライブ盤の終盤にある通算3枚目のアルバム『The Captain and Me』からの2曲では Tom Johnston が加わって大団円を迎えるが、この2曲を始める前に Patrick Simmons は感極まったような声で Tom Johnston を紹介する。この MC があるからこそ『Long Train Runnin'』と『China Grove』がさらに盛り上がるのに、CD として収録時間に余裕があるにも関わらずこの重要な MC をカットしてしまった2008年の Rhino からのリイシュー盤は貴重な最後のツアーの雰囲気を台無しにしてしまったともいえる。

Farewell Tour
Slippery St. Paul
Takin' It To The Streets
Jesus Is Just Alright
Minute By Minute
Can't Let It Get Away
Listen To The Music
Echoes Of Love
What A Fool Belives
Black Water
You Belong To Me
Slat Key Soquel Rag
Steamer Lane Breakdown
South City Midnight Lady
Olana
Don't Start Me To Talkin'
Long Train Runnin'
China Grove

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