The Rolling Stones／『It's Only Rock 'n Roll』

『The Brussels Affair '73』にある1973年の欧州ツアー後の11月、The Rolling Stones はドイツにある Musicland Studios で次のアルバムの制作を開始。このアルバムでは1968年の『Beggars Banquet』以来続いてきた プロデューサー Jimmy Miller の手を離れ、Mick Jagger と Keith Richards のふたりによる The Glimmer Twins が初めてプロデュースにあたった。

当初、このアルバムは R&B のカバーと欧州ツアーからのライブ音源を半分ずつ収めたアルバムにする計画があったらしいが、最終的に新曲を中心にした構想へと変わり、当初の計画の名残りとしてカバーは The Temptations の1966年のヒット曲『Ain't Too Proud To Beg』だけが収録された。

The Glimmer Twins の初プロデュース・アルバム『It's Only Rock 'n Roll』はまた、1969年のアルバム『Let It Bleed』以来のメンバーだった Mick Taylor が参加した最後のアルバムでもあった。

この『It's Only Rock 'n Roll』でも Taylor はスライド・ギターを随所でプレイし、『Till The Next Goodbye』と『Time Waits For No One』では曲作りに貢献。しかし Taylor の名前はどこにもクレジットがなく、ドイツでのレコーディング中には Keith との仲も険悪になり、1974年の12月に Taylor はバンドを去ることになった。

と、アルバム制作中にゴタゴタがあったものの、このアルバムからはリード・シングルとしてタイトル曲の『It's Only Rock 'N Roll (But I Like It)』が1974年7月にカットされ、英10位/米16位のヒットを記録。この曲は Taylor の後任として加入する Ronnie Wood の自宅にあるスタジオでデモがレコーディングされ、その時のメンバーには Faces の Kenney Jones がドラム、コーラスに David Bowie が参加していたという。

『It's Only Rock 'N Roll (But I Like It)』のカップリングはアルバム未収録の『Through The Lonely Nights』で、この曲は2005年のコンピレーション・アルバム『Rarities 1971-2003』でようやくアルバムに収録され、陽の目を見た。

そして、アルバムのリリースと同時にアメリカでは2ndシングルとして The Temptations のカバー『Ain't Too Proud To Beg』がカットされ、全米チャートで最高17位を記録した。

アルバム『It's Only Rock 'n Roll』は全米チャートで1971年のアルバム『Sticky Fingers』以来、4作連続で No.1 を記録。全英チャートでは『Let It Bleed』以来の連続 No.1 が途絶え、最高が2位だった。

Taylor が参加した最後のアルバムにはタイトル曲や『Dance Little Sister』で The Rolling Stones らしいロックな曲もあり、スローな『Time Waits For No One』や『Fingerprint File』という隠れた名曲も多い。The Glimmer Twins の初プロデュース・アルバムはひとまず成功と呼べただろう。

余談だがアルバムB面トップを飾った『Luxury』のオリジナルは5分01秒だったが、なぜか初期の CD では4分30秒のショート・バージョンが収録されていた。2009年版リマスター盤ではオリジナルのバージョンが収録されている。

It's Only Rock 'n Roll
If You Can't Rock Me
Ain't Too Proud To Beg
It's Only Rock 'N Roll (But I Like It)
Till The Next Goodbye
Time Waits For No One
Luxury
Dance Little Sister
If You Really Want To Be My Friend
Short And Curlies
Fingerprint File

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