Boz Scaggs／『Come On Home』

もし、先日紹介した Boz Scaggs のソロ・デビュー盤が気に入ったら、Boz が1997年にリリースした『Come On Home』も、きっとお気に召すかもしれない。

だが、1970年代中盤から1980年代にかけての Boz が好きな方には、ソロ・デビュー盤も、そしてこの『Come On Home』も、あまり聴く機会の少ないアルバムになってしまうだろう。

『Come On Home』がリリースされた当時の結果も同様で、『Come On Home』は全米アルバム・チャートにランクインしたが、最高が94位止まり。プラティナ・ディスクを連発した Columbia レーベル在籍時に比べ、Virgin 移籍後の Boz のアルバムは低調なセールスが続いた。

『Come On Home』にある14曲は、外部ライターによるタイトル曲を除き、Boz が書いた曲は4曲だけ。他の9曲は古くは1930年代の Sonny Boy Williamson の『Early In The Morning』に始まる、Boz の音楽ルーツとも言えるカバー曲が詰まっていた。

1997年に『Come On Home』を聴いたときは地味なアルバムと感じ、積極的に聴く機会もなく、そのうち CD 棚の肥やしになってしまった。だが、今なら、こういうアルバムは何度も繰り返し、そして、じっくりと聴いてみたいと思うようになった。

タイトル曲に続き、『Come On Home』で初めて登場する Boz が書いた新曲の『Picture Of A Broken Heart』。そして1945年の『Love Letters』へと続く中盤の曲は特に好きな箇所。『Love Letters』はこのアルバムで一番テンポの遅いバラードだが、これは1980年代に Boz が放ったバラードの名曲に劣らない曲だろう。

ブルースのカバーが多い中、アルバム最後に置かれた新曲の『Goodnight Louise』もバラードで、ここで聴ける Boz のボーカルもまた、今ならとても染み入る。

カバーした曲の中でも1930年代から1960年代のカバーが登場する『Early In The Morning』以降の4曲も、このアルバムの好きなところで、Boz のバックを支えるバンドのハーモニカやピアノ、オルガンの音も、いつまでも聴いていたいと思えた。

アルバムのジャケットもリリース当時は大した印象を持たなかったが、Boz の名前やアルバム・タイトルが描かれた店の壁の前で遊ぶ子供たちに、今度は Boz のこのアルバムに収録された曲が何らかの影響を与えるかな…とも思えた。

ソロ・デビュー盤を作ったときと異なり余裕ができた Boz だから、作ることのできた『Come On Home』は、セールスが低調に終わっても Boz には満足できるアルバムだったのではないだろうか。今なら、このアルバムにあるような曲だけのライブを見てみたいと思う。そんな印象に変わったアルバムだ。

Come On Home
It All Went Down The Drain (by Earl King, 1986)
Ask Me 'Bout Nothin' (But The Blues) (by Bobby Bland, 1969)
Don't Cry No More (by Bobby Bland, 1961)
Found Love (by Jimmy Reed, 1960)
Come On Home
Picture Of A Broken Heart
Love Letters (by Dick Haymes with Victor Young and His Orchestra, 1945)
I've Got Your Love
Early In The Morning (by Sonny Boy Williamson, 1937)
Your Good Thing (Is About To End) (by Mable John, 1966)
T-Bone Shuffle (by T-Bone Walker, 1949)
Sick And Tired (by Chris Kenner, 1957)
After Hours
Goodnight Louise

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