Ronnie Wood／『Not For Beginners』

1992年の『Slide On This』以来となる、Ronnie Wood の通算5枚目のスタジオ・アルバム『Not For Beginners』。Ronnie のアルバムはリリース当時に手に入れないと、いつの間にか入手困難な状況になっていて、アルバムのジャケットも変えてリイシューされたりと、この『Not For Beginners』も今は普通に手に入れるのが難しいようだ。

The Rolling Stones の活動では聴くことのできないボーカルに取り組んでいる他、気の合った友人、それも有名どころを多数招くという、これまでのスタジオ・アルバムにあった Ronnie らしい環境の中で、この『Not For Beginners』も作られていた。

そのメンバーは Bob Dylan を筆頭に、The Byrds の Roger McGuinn、Faces の Ian McLagan、Sly & The Family Stone の Andy Newmark、2000年代に Eric Clapton のツアー・バンドでベースを弾いていた1970年代から活躍する Willie Weeks の名前があった。

さらに、10曲目のインストルメンタル『Interfere』では、Elvis Presley とステージを共にしたギタリストで、この『Not For Beginners』制作時には60代前後だった Scotty Moore が参加。この曲では、やはり Elvis のバックでドラムを叩き、2009年に Rock And Roll Hall of Fame 入りした D.J. Fontana も参加。そして、Bob Dylan がギター、ピアノに Ian McLagan というラインアップでレコーディングされた。

ミュージシャンの繋がり以外にも『Not For Beginners』のレコーディングには Ronnie のふたりの家族が参加していた。

一人目は Ronnie の最初の妻 Krissy との間の息子 Jesse で、The Byrds の1967年のカバー『Rock N' Roll Star』を含む6曲でギターとベースを弾いているが、その中でも特に聴きどころなのが、6曲目のインストルメンタル『Hypershine』だろう。

もうひとりは二人目の妻 Joとの間に生まれた娘 Leah。『This Little Heart』と『Wake Up You Beauty』の2曲では Ronnie とのボーカルの絡みもあり、1950年代の Motown のカバー『Leaving Here』ではバック・コーラスも担当している。

『Leaving Here』と『Wake Up You Beauty』では兄の Jesse がギターも弾き、Ronnie がボーカルという家族3人が共演した曲だった。

古くからの友人、息子や娘の家族以外にも、Stereophonics の Kelly Jones という若手も『Not For Beginners』に参加し、『Whadd'ya Think』では Ronnie のしゃがれた声と絶妙なハーモニーを聴かせてくれている。

そして、このレコーディングのマスタリングは Bob Ludwig が担当。それぞれが弾くギターやドラム、ベース。そしてボーカルが、それぞれの立ち位置まで浮かび上がるようなクリアな雰囲気に仕上がっていた。

『Not For Beginners』の最後は Bob Dylan 作の『King Of Kings』で締め括られるが、このふたりだけのギターによるインストルメンタルは Bob Ludwig の手腕もあって繊細でかつ、ふたりの息遣いまで伝わるリアルな曲だった。

The Rolling Stones ではふたりの大きな影に隠れて、なかなか前面で大きく活躍する機会のない Ronnie だが、一転してソロ・アルバムは、そのどれもが佳作揃い。13曲で45分の『Not For Beginners』もまた、Ronnie の人柄がよく表れているアルバムだった。

Not For Beginners
Wayside
Rock N' Roll Star
Whadd'ya Think
This Little Heart
Leaving Here
Hypershine
R U Behaving Yourself
Be Beautiful
Wake Up You Beauty
Interfere
Real Hard Rocker
Heart, Soul & Body
King Of Kings

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