Heart／『Desire Walks On』

Heart のスタジオ・アルバムは1970年代中盤にデビューしてからのアコースティックな頃、1980年中盤に復帰しヒット曲を連発した頃。そして、ここ数年の再々復活の頃と、全てを紹介したつもりだったが、先日の『Jupiters Darling』と、この『Desire Walks On』の2枚だけが抜け落ちていた。

Ann と Nancy のふたりの表情が『Jupiters Darling』と同様、表ジャケットに写る『Desire Walks On』は1993年の暮れにリリース。スタジオ・アルバムとしては1990年の『Brigade』以来で、1991年にはライブ盤の『Rock The House Live!』をリリースしていた。

Heart がセルフ・タイトルを冠したスタジオ・アルバム『HEART』で華々しく復活し、続く『Bad Animals』と『Brigade』を含む3枚のアルバムが多くのシングル・ヒットを生んだが、この『Desire Walks On』はそれら3枚に比べ、セールスやチャートでの成績は芳しくなかった。

『Desire Walks On』からも4曲がシングル・カットされたが、『Will You Be There (In The Morning)』の全米チャート39位が最も良い結果。アルバムとしても全米チャートで48位が最高。それまでの3枚がいずれも Top3 以内に入り、セールスも最低でダブル・プラティナに輝いていたが、『Desire Walks On』はゴールド・ディスクに留まった。

しかし『Desire Walks On』は、それまでのアルバムで顕著だった外部ライターの起用を止め、Ann と Nancy を中心としたデビュー以来の曲作りに回帰したアルバムで、Wilson 姉妹以外による曲は、Donna Summer の『The Woman In Me』と Bob Dylan の『Ring Them Bells』のカバー2曲と、Robert John "Mutt" Lange による『Will You Be There (In The Morning)』の計3曲だけだった。

1970年代終盤から Heart に曲を書いてきた Sue Ennis も『Rage』『My Crazy Head』、タイトル曲『Desire Walks On』の3曲で参加。1980年代中盤の頃のような華々しさが消えた代わりに、1970年代後半のアコースティックなつくりを中心に据えた曲が『Desire Walks On』では増えていた。

それまでのアルバムに参加していたベースの Mark Andes は抜けてしまったものの、1980年代序盤の不遇な頃を過ごし、その後の復活を共にしたギターの Howard Leese と、ドラムの Denny Carmassi のふたりも『Desire Walks On』で Wilson 姉妹を支えていた。

『Desire Walks On』がリリースされた1993年頃、時代は Heart のようなサウンドではなく、オルタナティブなロックが主流となり、このアルバムにあるような曲に逆風な状況だった。それが災いし、当時奮わなかった『Desire Walks On』だが、今もなお活躍する Heart を知ったうえで『Desire Walks On』を聴くと、この頃から今も現役で活躍する Heart のスタイルが始まっていたようにも思える。

『Desire Walks On』の後に Heart は再びライブ盤をリリースするが、その『The Road Home』はアコースティックをメインにしたセットでのライブで、このライブ盤のプロデュースは、かつて Heart が似ていると言われた Led Zeppelin の John Paul Jones が務めてもいた。

Desire Walks On
Desire
Black On Black II
Back To Avalon
The Woman In Me
Rage
In Walks The Night
My Crazy Head
Ring Them Bells
Will You Be There (In The Morning)
Voodoo Doll
Anything Is Possible
Avalon (Reprise)
Desire Walks On

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