Passengers／『Original Soundtracks 1』

きのう紹介の『The Million Dollar Hotel』に続き、このアルバムもまた、U2 のメンバーは参加しているものの、Passengers という架空のプロジェクト名義でリリースされた。

このアルバムの裏ジャケットには U2 の4人のメンバーそれぞれの名前と Brian Eno の名前が併記され、さらに Luciano Pavarotti、Howie B、Holi の名前が extra passengers として記されていた。

Luciano Pavarotti と Howie B は既に知っていた名前だったが、ここに並んでいた Holi とは小林明子のことで、『Ito Okashi』で日本語のボーカルを務めていた。

一見すると『The Million Dollar Hotel』と同じように、ある映画のサウンドトラック盤のように思えるアルバムだが、ここにある曲のほとんどは架空の映画のために作られたサウンドトラックという設定で、多くは実在しない映画ばかり。

だが、『Your Blue Room』と『Beach Sequence』は1995年のイタリア映画『Beyond The Clouds』で使われた実際のサウンドトラックで、『Miss Sarajevo』は1995年のドキュメンタリー番組で使用。そして『One Minute Warning』も1995年の映画『Ghost In The Shell』で実際に使われた曲だった (が、こちらのサウンドトラック盤には未収録)。

UK 盤と日本盤にはボーナス曲として『Bottoms (Watashitachi No Ookina Yume)』が追加されていたが、この曲は1991年のスタジオ・アルバム『Achtung Baby』にあった『Zoo Station』のリミックスで、これはオーストラリアの同名映画のサウンドトラックという設定でもあった。

ちなみに小林明子が歌う『Ito Okashi』は日本映画『Ito Okashi / Something Beautiful』という設定。Howie B が参加した『Elvis Ate America』は同名のアメリカ映画という設定だった。

また2曲目にある『Slug』は、1993年の Zoo TV Tour で東京新宿に滞在していた U2 の体験から作られた曲で、当初の仮タイトルは西武デパートの名前から『Seibu』と呼ばれていたようだ。

ドラムの Larry Mullen, Jr. はこのアルバムをあまり好きじゃないと発言しているが、Bono によれば、このアルバムはドラムをプレイする機会があまりなかったからでは…と、説明している。

U2 名義のオリジナル・アルバムではない『Original Soundtracks 1』だが、『Miss Sarajevo』は U2 のライブでもこれ以降、度々プレイされるようになり、ベスト盤の『The Best Of 1990-2000』にも収録されている。

U2 のアルバムで『Zooropa』と『Pop』の間にある Passengers 名義の『Original Soundtracks 1』もまた、きのうの『The Million Dollar Hotel』と同じで、U2 のディスコグラフィで見過ごされがちなアルバムだが、機会があれば一度は聴いて欲しい一枚だ。

Original Soundtracks 1
United Colours
Slug
Your Blue Room
Always Forever Now
A Different Kind Of Blue
Beach Sequence
Miss Sarajevo
Ito Okashi
One Minute Warning
Corpse (These Chains Are Way Too Long)
Elvis Ate America
Plot 180
Theme From The Swan
Theme From Let's Go Native

タグ：U2 1995