Original Soundtrack／『FM』

今回紹介する『FM』は、同名映画のオリジナル・サウンドトラック盤だが、この映画の詳細は今もよく分からない。ユニバーサルが制作し、1978年に全米公開された映画なのだが、当時も以降も日本では劇場公開されず、どのような映画なのか一切不明で今日に至っている。

そんな映画であるにも関わらず、当時2枚組みLPとしてリリースされたこのアルバムは、参加しているアーティストの豪華な顔ぶれから隠れた名盤みたいな存在だった。

このアルバムには全米のラジオ局でヒットした曲が多く収録され、Steely Danによるタイトル曲は彼らのオリジナル・アルバムに未収録で、このアルバムでしか聴けないとてもレアな曲だ。(その後、Steely Danはベスト盤などでこの曲を収めている)

また、この映画が公開された1978年当時は洋楽の情報も限られていたが、洋画の情報もまた同じだった。メジャーな洋画は数か月遅れで日本公開されていたが、この映画のように日本公開の目処が立たない映画は全く情報がない状態だった。

当時、洋楽に詳しいBilly Joelのファンだった友人を介して、このアルバムを知ったが、こんな友人がいなければ、このアルバムを知る機会はもっと後になっていただろう。

このアルバムにはニューヨークを拠点にするBilly Joelが参加していれば、西海岸を代表するEaglesが曲を提供。そして、後に『Middle Man』のヒットで知るBoz Scaggs、ブリティッシュ・ロックからはQueen、そして大ヒット・アルバムをリリースしていたBostonなど…、この頃のヒットした曲がたくさん詰め込まれていた。

当時はその豪華メンバーのごく一部しか知らなかったが、時が経つにつれて参加したアーティストのキャリアを少しずつ知っていくことで、よくこれだけのメンバーを集められたものだと感心してしまう。しかも、LP2枚にも及ぶボリュームで、だ。

この頃はパンクの風が吹いていた頃でもあるが、このアルバムを聴く限り、その雰囲気はほとんどない。逆にAORな香りが漂う(なんというか…)大人向きな音楽が詰まっていた。

このアルバムを知ったのは1978年ではなく、翌年か、翌々年だったかもしれない。当時はこのアルバムの持つそんな魅力に惹かれ、そして限られた情報しかない映画(である点)を知っていることで、ちょっとした優越感にも浸っていたことを覚えている。

『FM』
"FM" by Steely Dan
"Night Moves" by Bob Seger
"Fly Like An Eagle" by Steve Miller
"Cold As Ice" by Foreigner
"Breakdown" by Tom Petty and The Heartbreakers
"Bad Man" by Randy Meisner
"Life In The Fast Lane" by Eagles
"Do It Again" by Steely Dan
"Lido Shuffle" by Boz Scaggs
"More Than A Feeling" by Boston
"Tumbling Dice" by Linda Ronstadt
"Poor, Poor Pitiful Me" by Linda Ronstadt
"Livingston Saturday Night" by Jimmy Buffett
"There's A Place In The World For A Gambler" by Dan Fogelberg
"Just The Way You Are" by Billy Joel
"It Keeps You Runnin'" by The Doobie Brothers
"Your Smiling Face" by James Taylor
"Life's Been Good" by Joe Walsh
"We Will Rock You" by Queen
"FM (Reprise)" by Steely Dan

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