Queen／『Flash Gordon』

1980年にリリースされた『Flash Gordon』をQueenのオリジナル・アルバムとするのは、当時はあまり歓迎できないことだった。歌詞のある曲は冒頭の『Flash's Theme』と最後の『The Hero』だけで、他は全て4人のメンバーによるインストルメンタル曲だったこともその理由のひとつだった。

そして、そのインストルメンタル曲も随所に映画のセリフが入り、Quuenのアルバムとして楽しむより、映画のサウンドトラック集としか捉えようがなかった。

しかし、そのサウンドトラックという扱いにしても、この頃はアーティストが提供した曲だけを収めたコンピレーション・アルバムというかたちもあり、映画内で使用したインストルメンタル曲中心のサウンドトラックというかたちも、このアルバムが馴染めないもうひとつの理由だった。

このアルバムは『The Game』に続き、Queenのメンバーが積極的にシンセサイザーを導入したアルバムとしても注目を集めていた。確かに全員が今まで以上にシンセサイザーをプレイしているのだが、それも過剰な演出に聴こえてしまった。

Queenが積極的に関与した映画にも関わらず、映画の出来もB級だった。当時は、STAR WARSなど優れたSF映画が公開された後だっただけに、そのB級感は余計際立って見えてしまった。

東京でのプレミア上映には、コンサートで来日したQueenのメンバーも登場し、花を添えた。そのプレミア上映が行なわれたテアトル東京で改めて『Flash Gordon』を見ても、やはり今ひとつな出来という思いは変わらなかった。

と、ネガティブな思い出しか見当たらない『Flash Gordon』だが、発表から約30年が経とうとしている今改めて聴くと、「まぁ、それほど悪くもないかな…」という気持ちがある。

このアルバムの発表された頃は全米No.1になった『The Game』に続いてリリースされることもあり、過度な期待が大いにあった。それだけに、期待を裏切るような内容にガッカリする以上に大きな落胆もあった。

だが今、大半を占めるインストルメンタル曲もサウンドトラックの一部と冷静に聴けば、そんなに悪くないようにも感じる。映画の出来は今でも思い浮かび、その貧弱な映像を思い出すと曲も貧弱に思えてしまうのだが…。

Queenはこの『Flash Gordon』を経て、問題作『Hot Space』の発表へ至るが、『Flash Gordon』がなく、いきなり『Hot Space』というアルバムが出てきたらどうなっていただろう? ひょっとしたら『Flash Gordon』みたいなシンササイザーを大掛かりに導入したスタジオ・アルバムになっていたかもしれない。そんな『Hot Space』も聴いてみたいと思うが、『Flash Gordon』があったおかげで『Hot Space』ではシンセサイザーの使用が必要最低限に抑えられたのではないだろうか?

と、いろんな思いが飛び交う『Flash Gordon』だが、肩肘を張らずにインストルメンタルが多いアルバムとして聴けば、意外にもいいかな? と思ってしまうアルバムだ。

『Flash Gordon』
Flash's Theme
In The Space Capsule (The Love Theme)
Ming's Theme (In The Court Of Ming The Merciless)
The Ring (Hypnotic Seduction Of Dale)
Football Fight
In The Death Cell (Love Theme Reprise)
Execution Of Flash
The Kiss (Aura Resurrects Flash)
Arboria (Planet Of The Tree Men)
Escape From The Swamp
Flash To The Rescue
Vultan's Theme (Attack Of The Hawk Men)
Battle Theme
The Wedding March
Marriage Of Dale And Ming (And Flash Approaching)
Crash Dive On Mingo City
Flash's Theme Reprise (Victory Celebrations)
The Hero

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