Queen／『A Day At The Races』

前作『A Night At The Opera』から約1年後にリリースされたQueen通算5枚目のアルバム『A Day At The Races』は、前作と対になるアルバムだとよく言われる。しかし、前作までプロデューサを務めたRoy Thomas Bakerを離れ、初のセルフ・プロデュースとなった『A Day At The Races』は、これ以降のアルバムで顕著になるシングル指向が垣間見られるアルバムのようにも感じる。

シングルにはちょっと長めな4分台後半の曲もあるが、よりポップな傾向の曲になり、メロディが美しい曲が揃っている。

Brian Mayの『Tie Your Mother Down』や『White Man』では、ハード・ロックな一面を残しているが、同じBrian May作のアルバム最後を飾る『Teo Torriatte』は、日本語の歌詞も相まってとても親しみやすい曲に仕上がっている。

Brian Mayの曲がアルバムの冒頭と最後を飾っているが、『Tie Your Mother Down』のイントロと『Teo Torriatte』のアウトロは繋がっているとも言われる。

また、Freddie Mercuryによる『You Take My Breath Away』と『The Millionaire Waltz』では、ピアノがとても効果的に弾かれる、いかにもFreddie Mercuryらしい内容の曲だ。この2曲は、とても他のアーティストでは作りえない曲だろう。Freddie Mercuryという唯一無二の存在があってこそ、生きる曲の好例ではないだろうか。

Freddie Mercuryはこのアルバムからシングル・カットされた『Somebody To Love』と『Good Old-Fashioned Lover Boy』も生み出している。前者は『A Night At The Opera』の『Bohemian Rhapsody』のような曲だとも言われるが、全く別物の曲だろう。『Bohemian Rhapsody』のオペラに代わり、『Somebody To Love』ではゴスペル調なコーラス・ワークがピークに達した曲だ。

そして『Good Old-Fashioned Lover Boy』はQueen初のEPのタイトル曲で、『A Day At The Races』からの4枚目のシングルになった。この曲はデビュー盤の『Great King Rat』、2作目の『The Fairy Feller's Master-Stroke』、3作目の『Bring Back That Leroy Brown』、そして前作の『Lazing on a Sunday Afternoon』に続く、Freddie Mercuryのコメディ路線の集大成のようでもある。

ふたりの陰に隠れてしまいがちだが、John Deacon作の『You And I』は、前作の『You're My Best Friend』にも似た、こちらもJohn Deaconらしさがよく伝わってくる曲。当時のアルバムA面の最後を飾るに相応しい曲だが、CD時代になり、いきなり『Somebody To Love』が始まる展開は、『A Day At The Races』というアルバムの雰囲気を壊しているようにも感じる。

『A Day At The Races』ではJohn Deaconと同じく、Roger Taylorの曲は『Drowse』の1曲しかない。この曲で聴かれるBrian MayとRoger TaylorによるギターはまるでPhil SpectorのWall of Sound調。Brian Mayが初めてスライド・ギターに挑戦した曲でもある。

『A Day At The Races』
Tie Your Mother Down
You Take My Breath Away
Long Away
The Millionaire Waltz
You And I
Somebody To Love
White Man
Good Old-Fashioned Lover Boy
Drowse
Teo Torriatte (Let Us Cling Together)

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