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Paul McCartney/『Tug Of War』 [CD]

Tug-of-War.jpgMcCartney II』を1980年にリリース後、Wings のメンバーとレコーディングを行っていた Paul McCartney だったが、1980年12月に John Lennon が射殺され、レコーディングは中断。翌年2月に再開したレコーディングでは The Beatles で活動を共にした Ringo Starr や、Carl Perkins や Stevie Wonder らの大物ゲストとレコーディングを進め、夏には The Beatles 時代のプロデューサーでもある George Martin と制作を煮詰め、そして出来上がったアルバムが『Tug Of War』だった。

多くのゲストを招きレコーディングが行われ、このアルバムの選に漏れた曲は次のアルバム『Pipes Of Peace』に持ち越された。いまだに Wings 解散後の Paul のソロ・アルバムではこの『Tug Of War』をベストに挙げる声が多い。

Paul のソロ時代のアルバムがリマスターされた際、この『Tug Of War』には一切のボーナス曲が追加されなかった。シングルのB面でしか聴けない曲も多かったはずだが、それらは一切収録されず、1枚のアルバムとして完成度が高いアルバムだった。

アルバムのトップに配されたタイトル曲の『Tug Of War』は、ドラムが入ってくるあたりから曲の広がり感が増し、ストリングスやホーン、コーラスなどが徐々に加わって、さらにスケール感の大きな曲へと変化していく。

その1曲目から間をおかずに Ringo Starr のドラムで始まる曲『Take It Away』は、妻の Linda のバック・コーラスがとても美しい曲で、このアルバムのベスト・トラックの1つだった。

3曲目の『Somebody Who Cares』は Paul の瑞々しいボーカルが楽しめる曲。派手さはないけど Paul らしさが十分表れている優しい曲で、間奏で聴けるつまびくギター・ソロもいい。

そして『Tug Of War』に参加したゲストの中でも大物 Stevie Wonder との1つ目の共作曲である『What's That You're Doing?』は、イントロから Stevie らしい感じの曲で、最初のボーカルも Stevie が務めている。Paul のボーカルも若干イフェクトがかかり、Stevie のスタイルをマネたかのよう。曲の最後には『She Loves You』の一説も飛び出す。

そして当時の LP でA面の最後は John の死を悼む『Here Today』だった。『Here Today』は長い間ライブでも披露されることがなかった曲だが、最近は積極的にステージ上でプレイし、その際には Paul の涙ぐみ声がうわずってしまうこともしばしばみられた。リリース当時は The Beatles 時代の『Yesterday』と比較されたこともあった。

『Tug Of War』のB面最初は賑やかで派手な『Ballroom Dancing』でスタート。『Tug Of War』では初めて Paul のシャウトが聴ける曲で、これもライブで映える曲だと思うが、いまだにライブでプレイしたところを見たことがない。

派手な曲の後には曲のタイトルにもあるコインが転がる音が軽やかな『The Pound Is Sinking』。このアルバムでは一番地味な曲かも。

続く『Wanderlust』は Paul らしい、Paul にしか作れない曲。『Tug Of War』からシングル・カットされることのなかった曲だが、アルバムを代表する曲の1つだ。ホーンの入り方は The Beatles の中期の曲のようで、終盤で聴かれる Paul のダブル・ボーカルも美しい。

『Get It』は1950年代に活躍し、Paul の憧れの人物のひとりでもある Carl Perkins とのデュエット曲。のんびりとしたイントロでスタートし、Paul のボーカルに続き、Carl Perkins のボーカルが続くが、どちらも力の抜けた感じでレコーディングがリラックスした雰囲気で行われたと感じる。最後に入っている Carl Perkins の笑い声からもそんな雰囲気がうかがえる。

30秒程度の短い曲ながら Paul のファルセットが聴ける『Be What You See (Link)』を挟んで続く『Dress Me Up As A Robber』でも Paul のファルセットが最初から全開。アルバムのエンディングに向けて徐々に盛り上げていくスタイルの曲は、この場所にしかあり得ない絶妙の配置だった。

そして『Tug Of War』の最後を飾るのは Stevie Wonder とのもう一つのデュエット曲『Ebony And Ivory』。アルバムからの1stシングルに選ばれた『Ebony And Ivory』は全英チャートで3週連続 No.1、全米チャートで7週間連続で No.1 に輝いた。当時のシングルには Paul のソロ・バージョンが収録され、以降、長い間聴くことができなかったが、2007年に iTunes で『Tug Of War』が配信された際にボーナス・トラックとしてようやく陽の目をみた。

アルバムには他にも多くのゲストが参加し、その中には Roxy Music の Andy Mackay、ドラムにジャズ畑だけでなくポップス界でも幅広い活躍をしていた Steve Gadd、やはりジャズ系アーティストとして有名なベーシストの Stanley Clarke、後に Pau のアルバムをプロデュースすることにもなる 10cc の Eric Stewart がギターやバック・ボーカルで参加していた。

『Tug Of War』は全米アルバム・チャートで3週連続 No.1、全英チャートで2週連続 No.1 を記録した。Paul のアルバムが英米双方のチャートで No.1 になったのは1975年の『Venus and Mars』以来、『Band on the Run』を含めて3枚目で、これ以降、英米双方で No.1 になったアルバムは出ていない。

Tug Of War
Tug Of War
Take It Away
Somebody Who Cares
What's That You're Doing?
Here Today
Ballroom Dancing
The Pound Is Sinking
Wanderlust
Get It
Be What You See (Link)
Dress Me Up As A Robber
Ebony And Ivory



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