Billy Joel／『2000 Years - The Millennium Concert』

Billy Joel が21世紀に初めてリリースしたアルバムは、21世紀になる瞬間にニューヨークの Madison Square Garden で行われたライブの模様を収めた2枚組のライブ盤だった。Billy のライブ盤はこれで通算3枚目、そして2枚組でのリリースは初めてのことだった。

ベートーヴェンの第9交響曲でスタートするこのライブは1曲目の『Big Shot』から Billy のボームタウンであるニューヨークのファンの歓声がもの凄い。アンコールの最後でプレイされることの多かった『Big Shot』だが、こうしてコンサートのオープニングに持ってきても全然違和感なくピタリとハマっている。

このライブでは Billy の MC も曲と曲の間にたくさん入っている。この MC を少しでも削れば収録曲を増やすこともできたろうが、Billy と地元ファンの間で交わされるやりとりはとても面白いので、今回の MC を収録して正解だっただろう。

ライブ盤の1枚目は Billy がピアノに座ってプレイする曲が中心で、Billy のピアノ・プレイもこのライブ盤の聴きどころの1つになっている。

ピアノを弾くアーティストが中心のポップス系コンサートだと、コンサートそのものに大きな動きがなく平坦な印象になりがちだが、Billy のコンサートではそんな感じは全くない。これは Billy のコンサートを一度でも経験したことがある方なら同じ意見ではないだろうか。

Billy のコンサートでのファン・サービスの旺盛さは、まさにエンターテイナーの名に相応しく一時も飽きさせない。1枚目では『Big Shot』以外の全ての曲でそんな Billy のピアノ・プレイがたっぷり堪能できる。

2枚目に入るとピアノを離れてマイク・スタンドにギターを抱えた従来のピアノ・マンというイメージとは違う、もうひとつの Billy も登場する。

そして1999年12月31日から2000年1月1日に変わるときは、それを祝うかのように『2000 Years』と『Auld Lang Syne』の2曲がプレイされる。『Auld Lang Syne』は日本では『蛍の光』でも親しまれているスコットランドの民謡だが、その移民も多いニューヨークでプレイされるこの曲には21世紀へ変わることも含め、いろいろな意味が込められているようにも感じる。

このときの実際のライブでは Billy の声がスタジオ・アルバムに比べキーを落としてプレイされたとあるが、このライブだけを聴いた限りでは、全くその事による影響はみられない。むしろ、そんな事を気にせず、大晦日のライブを純粋に楽しんでいる様子が伝わってくる。

終盤には The Rolling Stones のカバー『Honky Tonk Women』に続き、全米 No.1 シングルの『It's Still Rock & Roll To Me』、そしてガラスの割れるイントロで一気にファンの熱気が上がる『You May Be Right』と怒涛のロックンロール3曲が続く。そして、その熱気を冷ますかのように最後は『This Night』でこの記念すべき夜のライブは締め括られる。

Billy の代名詞でもある『Piano Man』がこのライブ盤では収録されておらず不思議に思ったが、一説ではこのライブで『Piano Man』をプレイする頃に Billy はベロベロに酔っ払ってしまい、呂律が回らない状況にもなっていたとか…。

だが、そんな事も気にせず、Billy の20世紀のヒット曲が多く並ぶこの夜のライブを素直に楽しみたい。

2000 Years - The Millennium Concert
【Disc 1】
Beethoven's Ninth Symphony
Big Shot
Movin' Out (Anthony's Song)
Summer, Highland Falls
The Ballad Of Billy The Kid
Don't Ask Me Why
New York State Of Mind
I've Loved These Days
My Life
Allentown
Prelude/Angry Young Man
Only The Good Die Young
【Disc 2】
I Go To Extremes
Goodnight Saigon
We Didn't Start The Fire
Big Man On Mulberry Street
2000 Years
Auld Lang Syne
The River Of Dreams
Scenes From An Italian Restaurant
Dance To The Music
Honky Tonk Women
It's Still Rock & Roll To Me
You May Be Right
This Night

タグ：Billy Joel 2000 ライブ盤