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Paul McCartney/『Press To Play』 [CD]

Press-to-Play.jpgWalkman でシャッフル・プレイをしていた時に偶然かかった『Angry』がきっかけで、久しぶりに Paul McCartney が1986年にリリースした『Press To Play』を聴いてみた。

このアルバムのオリジナルは全10曲構成で、Paul と 10cc の Eric Stewart が基本となって曲作りを行い、Paul が単独で作った曲は収録曲数の半分以下の4曲だけだった。

『Press To Play』の LP 版は『Stranglehold』で始まり『However Absurd』で終わる10曲で、A面とB面にそれぞれ5曲ずつが収められていた。この構成がオリジナルで、アルバムとしてのまとまりが最も感じられる構成だった。

それが CD としてリリースされた『Press To Play』になると、このアルバムからのシングルB面曲が3曲追加されて13曲構成へと変わり、1993年にリイシューされた際にはさらに2曲が追加されて15曲構成へと変化。評価の難しいアルバムが、より一層、アルバムとしてのまとまりがないかたちへと変わってしまった。

もちろん、Paul のアルバム未収録曲がたくさん聴けることは単純に嬉しいが、アルバムとしての流れも重要だ。1986年当時はあまり評価をしなかった『Press To Play』だが、『However Absurd』で区切りをつけて改めて聴くと、意外にも良いアルバムではないかと思う。

この『Press To Play』がリリースされた1986年当時は、よりシングルが重視され、旧態依然としたアーティストが軒並み苦労を強いられ、それは Paul にとっても同様だった。また、このアルバムの前にリリースした『Give My Regards to Broad Street』が映画同様に評価が低く、前作まで3作続いた George Martin との制作体制も方針転換を行うことになった。

そして選んだパートナーが 10cc の Eric Stewart であり、この頃 Phil Collins や The Police の一連のアルバムを手がけた Hugh Padgham のプロデュース起用だった。

その効果はどうだった? と問われると、正直成功と呼べなかった。10cc や、Phil Collins、The Police でとられた手法は、必ずしも Paul の曲にマッチせず、作り込み過ぎや、アイディアの詰め込み過ぎという印象がこの『Press To Play』には強かった。

そんな中、Paul だけがクレジットされた『Only Love Remains』はこのアルバムで光る曲の1つだった。Paul が得意とするメドレー形式の『Good Times Coming/Feel The Sun』もこのアルバムでは好きな曲だが、少々手を加え過ぎな感じだった。

だが Eric Stewart との共作である『Angry』や『Move Over Busker』では久々に Paul のロックな面が表れ、この2曲では Paul のシャウトも聴ける。『Angry』ではギター に Pete Townshend を迎え、ドラムには Phil Collins が参加。ここに Paul のベースとシャウトが加わり、Linda のコーラスもロックな雰囲気の盛り上げに大きく貢献していた。

静かなA面に比べて、動のB面といった感じの『Press To Play』は好みがあるだろうが、この2曲があるB面の流れはとても好きだ。

オリジナルの『Press To Play』は Tony Visconti がアレンジしたオーケストラを含む『However Absurd』で終わる。アルバムの最後を盛大に盛り上げる手法は、Paul のアルバムにお馴染みだが、CD 時代の『Press To Play』はこの後からアルバムの流れに反した曲が幾つも並び、アルバムとしての統一感をなくしてしまった。

Paul のアルバムとして『Press To Play』は平均のレベルかもしれないが、個々の曲でみれば、幾つもいい曲が揃っていたアルバムだった。リリース当時は全くそんな感じに思えなかった『Press To Play』だが、時間が経って、その良さがわかってきたというところだろうか。

ジャケットは1930年代からハリウッド・スターを撮り続けてきた George Hurrell による Paul と Linda のモノクロ画像が使われ、これは Paul の数多いソロ・アルバムの中でも好きなジャケットだった。

Press To Play
Stranglehold
Good Times Coming/Feel The Sun
Talk More Talk
Footprints
Only Love Remains
Press
Pretty Little Head
Move Over Busker
Angry
However Absurd
以下、CD 版に追加された曲
Write Away (『Pretty Little Head』B面曲)
It's Not True ※ (『Press』B面曲)
Tough On A Tightrope (『Only Love Remains』B面曲)
以下、1993年版に追加された曲
Spies Like Us
Once upon A Long Ago (Long Version)
※:クレジット上、Paul だけが表記されていた曲



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コメント 4

seawind335

同感です。
私もブログに書きましたが、ともすればボーナストラックがせっかくのアルバムのコンセプトをぶち壊してしまいますね。

何か、「自分で自分の首を絞める」ような気がします。
by seawind335 (2010-11-19 23:03) 

MCMLXV_65

こんばんは、seawind335さん。毎回コメント感謝、感謝です!! seawind335さんのブログにある「ボーナストラックについて考える」を拝見しました。その中の【パターン2】に『Press To Play』もあてはまるでしょうか?!

レーベル側の意向でボーナス曲が増えていってしまうのですが、アルバムの当初の意図からどんどん離れてしまい、ボーナス曲の追加には一長一短だと感じます。

以前『Red Rose Speedway』を取り上げましたが、あそこには『Hi,Hi,Hi』がボーナス曲であります。それでこのアルがムは好きという意見もあるのですが、私はそれには賛成できないんですよねぇ。できれば、そういう曲は1枚にまとめ、オリジナルは忠実な決定盤を出して、それを長くカタログ化してほしいんですけど…。
by MCMLXV_65 (2010-11-19 23:24) 

seawind335

そうですね、【パターン2】でしょうね。
映画のDVDの「特典映像」みたいに、「メディアには収録されているものの、別な入口から入る」みたいな仕掛けが出来れば、少しは改善されると思うのですが・・・
by seawind335 (2010-11-19 23:47) 

MCMLXV_65

CDだと映像を見ながら…なんてことができないので、強いてあげるとボーナス曲が始まる前に少し長めの無録音時間を設けるくらいでしょうかねぇ。

CD時代になって収録できる時間は増えましたが、むやみにそれを埋めようとオリジナルの雰囲気を台無しにする安易な追加だけは勘弁してほしいですネ。
by MCMLXV_65 (2010-11-20 00:10) 

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