David Bowie/『★』 [CD]
最近、このブログで以前のようにアルバムを紹介することが全くなくなったけど、この David Bowie の新作『★』だけは、きちんと、その思いを今、残す必要があると思い、久々にこの場で一枚のアルバムを紹介しようと思う。
とは言いつつも、そう思ったのは、やっぱり1月11日の午後3時半頃、いきなり Twitter の TL 上に現れた Bowie の公式 facebook から転載された、この一文がきっかけだった。
このツィートを見て思わず、「はぁ、ちょっと、本当ですか??」としか反応できなかったが、その頃、日本は午後3時。海外、ロンドンでは朝の6時、ニューヨークでは深夜1時だったので、海外メディアも、まだ全然対応できる状況になく、真偽の程を推し量ることはできなかった。
だが、徐々にその状況が事実とわかり、様々な思いが世界中を駆け巡ることになった。
この時点で手元に新作『★』は、まだなかった。amazon の価格変動を見ながら、10日(日)にやっと、底値…? と思い注文。配達予定日の12日(火)を待つ状態だった。
なので、訃報に接した後で聴く『★』に、もう他の新作と同じような接し方はできなくなってしまった。どうしても、Bowie の死を意識して聴くことは避けられなくなってしまった。
そんな思いを持ちながら、1曲目のタイトル曲『★』から聴いた。この曲は既に PV が公開され、10分に及ぶ大作であること。そして何やら不穏な雰囲気から、第一印象はさほどよく感じなかった。しかし、音だけを冷静に聴けば、そんなに悪くもない…。また Bowie が新しいことにチャレンジしている、10分という時間を忘れてしてしまう曲だな…と、印象を改めた。
タイトル曲『★』に続く『'Tis A Pity She Was A Whore』は、また一転してポップな曲で、シングル向けにも感じるいい曲。なのに、それを敢えて、アルバムの表舞台に取り上げてこないのが Bowie らしい! とも思った。
そして、最近公開された PV に「怖い…」印象だけが強烈に残った『Lazarus』が続く。しかし、この曲も音に集中して聴くと、その一音一音に惹きつけられる魅力があった。言うまでもなく歌詞の内容は、この今の状況を想定したような言葉が並ぶ曲でもあった。
『Sue (Or In A Season Of Crime)』は、一昨年末にリリースされた新装ベスト盤に収録されたが、そちらを聴いたことがなかったので、全く初めて聴く曲だった。この曲には、1997年のアルバム『EARTHLING』に近い雰囲気も感じた。
ここまでの4曲は何らかのかたちで、アルバム・リリース前に披露されていたが、これ以降、『Girl Loves Me』からの3曲は『★』で初めて公開された曲が続く。
『Girl Loves Me』ではまた、また不安を掻き立てられるような思いになるが、次の『Dollar Days』では、そんな思いを打ち消すような穏やかな雰囲気になり、この激しい行き来がまた、Bowie の狙い…? なんてことを考えたりもした。
アルバム『★』の最後の曲、『I Can't Give Everything Away』は前の『Dollar Days』に続くかたちで始まる。もはや、この曲はタイトルが表すように、その意図することを考えずには聴けない曲になった。連呼されるタイトルの「I Can't Give Everything Away」が、あまりにも切ない。これが文字どおり、David Bowie のスワン・ソング。Bowie の新しい曲が聴けるのは、本当にこれが最後になってしまった。
Bowie は「全てを与えることはできない」と、この曲で謳っている。この訳は「与える」ではなく「諦める」と訳すこともできるそうで、それを考えると Bowie は「全てを諦めることはできない」と謳っているとも捉えられ、Bowie 自らも、その無念な思いを吐露する曲だったのか…という思いにもなった。
そして、そういうことを考えずに、この『★』という7曲入りのアルバムは聴けなくなってしまった。
ボーカルを弱々しく感じることもあるが、全盛期にもこんな感じで抑制気味に謳うことはあったし、それを思うと、抱えていた病気の影響が濃いとは必ずしも思えない。しかし、このアルバムの表ジャケットには Bowie の姿はなく、白と黒のデザインだけで彩られていた。そして、最後の曲、『I Can't Give Everything Away』の消え入る余韻に、ここまで惹きつけられるとは思ってもみなかった。
Bowie の死後、『★』にはまだ収録されなかった曲が5つほどあるとリークされ、今年の暮れにはデラックス・エデイションがリリースされるかも…? という情報が出てきた。しかし、『★』は現時点で、この7曲で完結するのがベスト、ここに余計なボーナス曲は不要だと思う。Bowie の意図した『★』は、この7曲で完結するのが正しいあり方だと思う。
この喧騒全てが一段落した時点で、アルバムに入らなかった未発表曲やバージョン違いの曲を別のディスクに収め、デラックス・エデイション化するのは、それはそれで意味があるだろう。しかし、7曲で完結するアルバムとしての『★』は、今、この時点で Bowie には必要だったと思う。
そして、それを見届けるかのように、Bowie は10日に逝ってしまった。
ひょっとしたら、Bowie は自身の69回目の誕生日にリリースされる『★』の評価を見届けたかったのかもしれない。そうだとしたら、それは嬉しい結果をもたらしたことだろう。リリース直後のメディアの評価は、概ね、いい内容が多かった。
そして、全英チャートではキャリア10枚目の No.1 に。そして、全米チャートでキャリア初の No.1 を記録することも、ほぼ確定したらしい。No.1 の獲得には訃報が影響しているかもしれないけど、そんな結果を天に召された Bowie は笑顔で喜んでいるだろう。
R.I.P. David Bowie
とは言いつつも、そう思ったのは、やっぱり1月11日の午後3時半頃、いきなり Twitter の TL 上に現れた Bowie の公式 facebook から転載された、この一文がきっかけだった。
January 10 2016 - David Bowie died peacefully today surrounded by his family after a courageous 18 month battle... https://t.co/ENRSiT43Zy
— David Bowie Official (@DavidBowieReal) 2016, 1月 11
このツィートを見て思わず、「はぁ、ちょっと、本当ですか??」としか反応できなかったが、その頃、日本は午後3時。海外、ロンドンでは朝の6時、ニューヨークでは深夜1時だったので、海外メディアも、まだ全然対応できる状況になく、真偽の程を推し量ることはできなかった。
だが、徐々にその状況が事実とわかり、様々な思いが世界中を駆け巡ることになった。
この時点で手元に新作『★』は、まだなかった。amazon の価格変動を見ながら、10日(日)にやっと、底値…? と思い注文。配達予定日の12日(火)を待つ状態だった。
なので、訃報に接した後で聴く『★』に、もう他の新作と同じような接し方はできなくなってしまった。どうしても、Bowie の死を意識して聴くことは避けられなくなってしまった。
そんな思いを持ちながら、1曲目のタイトル曲『★』から聴いた。この曲は既に PV が公開され、10分に及ぶ大作であること。そして何やら不穏な雰囲気から、第一印象はさほどよく感じなかった。しかし、音だけを冷静に聴けば、そんなに悪くもない…。また Bowie が新しいことにチャレンジしている、10分という時間を忘れてしてしまう曲だな…と、印象を改めた。
タイトル曲『★』に続く『'Tis A Pity She Was A Whore』は、また一転してポップな曲で、シングル向けにも感じるいい曲。なのに、それを敢えて、アルバムの表舞台に取り上げてこないのが Bowie らしい! とも思った。
そして、最近公開された PV に「怖い…」印象だけが強烈に残った『Lazarus』が続く。しかし、この曲も音に集中して聴くと、その一音一音に惹きつけられる魅力があった。言うまでもなく歌詞の内容は、この今の状況を想定したような言葉が並ぶ曲でもあった。
『Sue (Or In A Season Of Crime)』は、一昨年末にリリースされた新装ベスト盤に収録されたが、そちらを聴いたことがなかったので、全く初めて聴く曲だった。この曲には、1997年のアルバム『EARTHLING』に近い雰囲気も感じた。
ここまでの4曲は何らかのかたちで、アルバム・リリース前に披露されていたが、これ以降、『Girl Loves Me』からの3曲は『★』で初めて公開された曲が続く。
『Girl Loves Me』ではまた、また不安を掻き立てられるような思いになるが、次の『Dollar Days』では、そんな思いを打ち消すような穏やかな雰囲気になり、この激しい行き来がまた、Bowie の狙い…? なんてことを考えたりもした。
アルバム『★』の最後の曲、『I Can't Give Everything Away』は前の『Dollar Days』に続くかたちで始まる。もはや、この曲はタイトルが表すように、その意図することを考えずには聴けない曲になった。連呼されるタイトルの「I Can't Give Everything Away」が、あまりにも切ない。これが文字どおり、David Bowie のスワン・ソング。Bowie の新しい曲が聴けるのは、本当にこれが最後になってしまった。
Bowie は「全てを与えることはできない」と、この曲で謳っている。この訳は「与える」ではなく「諦める」と訳すこともできるそうで、それを考えると Bowie は「全てを諦めることはできない」と謳っているとも捉えられ、Bowie 自らも、その無念な思いを吐露する曲だったのか…という思いにもなった。
そして、そういうことを考えずに、この『★』という7曲入りのアルバムは聴けなくなってしまった。
ボーカルを弱々しく感じることもあるが、全盛期にもこんな感じで抑制気味に謳うことはあったし、それを思うと、抱えていた病気の影響が濃いとは必ずしも思えない。しかし、このアルバムの表ジャケットには Bowie の姿はなく、白と黒のデザインだけで彩られていた。そして、最後の曲、『I Can't Give Everything Away』の消え入る余韻に、ここまで惹きつけられるとは思ってもみなかった。
Bowie の死後、『★』にはまだ収録されなかった曲が5つほどあるとリークされ、今年の暮れにはデラックス・エデイションがリリースされるかも…? という情報が出てきた。しかし、『★』は現時点で、この7曲で完結するのがベスト、ここに余計なボーナス曲は不要だと思う。Bowie の意図した『★』は、この7曲で完結するのが正しいあり方だと思う。
この喧騒全てが一段落した時点で、アルバムに入らなかった未発表曲やバージョン違いの曲を別のディスクに収め、デラックス・エデイション化するのは、それはそれで意味があるだろう。しかし、7曲で完結するアルバムとしての『★』は、今、この時点で Bowie には必要だったと思う。
そして、それを見届けるかのように、Bowie は10日に逝ってしまった。
ひょっとしたら、Bowie は自身の69回目の誕生日にリリースされる『★』の評価を見届けたかったのかもしれない。そうだとしたら、それは嬉しい結果をもたらしたことだろう。リリース直後のメディアの評価は、概ね、いい内容が多かった。
そして、全英チャートではキャリア10枚目の No.1 に。そして、全米チャートでキャリア初の No.1 を記録することも、ほぼ確定したらしい。No.1 の獲得には訃報が影響しているかもしれないけど、そんな結果を天に召された Bowie は笑顔で喜んでいるだろう。
R.I.P. David Bowie
2016-01-14 13:57
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