David Bowie／『iSelect』

David Bowieほど、数多くのベスト盤があるアーティストもいないだろう。

古くはRCA在籍時の『ChangesOneBowie』に始まり、Rykodiscからリリースされた3枚組みの『Sound+Vision』は後に4枚組みとして再リリース。同じくRykodiscからリリースされた『The Singles Collection』は英米で微妙に選曲が異なり、その極めつけが2002年の『Best Of Bowie』だった。地域により収録曲が異なる20種類以上もの『Best Of Bowie』が存在し、中には特定の盤でしか聴けないレアな曲もあった。

そして、今回紹介のベスト盤『iSelect』だが、当初は2008年6月29日のイギリスの新聞『The Mail On Sunday』にて無料配布され、同年10月にCDとして改めて市場に流通した。

このベスト盤にもレア曲が含まれ、『Some Are』はRykodisc時代の『Low』にボーナス・トラックとして収録されていたが、レーベルの変更以来、どのCDにも収録されていない曲だった。

この『iSelect』はDavid Bowie自らが選曲に関わり、気に入っているアルバムの曲が選ばれているという。この様な意向もあり、通常のベスト盤にあるヒット曲は『Life On Mars?』、『Loving The Alien』、『Time Will Crawl』の3曲しかなく、1970年代のヒット曲に限ると『Life On Mars?』しかない。

なぜ、この様なベスト盤がいきなりリリースされたのか? その答えは最後に収められた『Hang On To Yourself』にある。

『Hang On To Yourself』は過去にブートレグとして流通し、2008年6月にEMIから公式にリリースされた『Live Santa Monica '72』からの曲。このライブ盤のリリースはイギリスが6月30日と、『iSelect』が無料配布された翌日だった。

と、新たなライブ盤のプロモーション目的で作られた(と思われる…)『iSelect』のブックレットにはDavid Bowieによる各曲のコメントがある。

普段、陽の目を浴びる機会の少ないアルバムの中の曲を聴くことで、過去のアルバムを再び聴きたいと思わすきっかけともなった『iSelect』。しかし、この『iSelect』自体を再び聴きたくなる機会は、そう多くはないだろう…。

『iSelect』
Life On Mars?
Sweet Thing/Candidate/Sweet Thing (Reprise)
The Bewlay Brothers
Lady Grinning Soul
Win
Some Are
Teenage Wildlife
Repetition
Fantastic Voyage
Loving The Alien
Time Will Crawl (MM Remix)
Hang On To Yourself (Live)

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