Phil Collins／『Serious Hits… Live!』

1990年は先日紹介した2組のアーティストの初来日という話題以外にも来日アーティストが多かった年で、この Phil Collins もその中のひとりだった。ドラマーとしても成功している Phil Collins なので、同時期に来日した他のアーティストのライブにゲスト出演するのでは…? という妙な期待感もあった。

結局 Phil Collins の姿は Paul McCartney のライブ会場にも(The Rolling Stones のライブにはあり得ない…)現れなかったが、単独で行なわれた横浜アリーナでのショーは、それはもう素晴らしいライブだった。

この『Serious Hits… Live!』の収録曲もプレイされたライブは、ジャケットにもある回転木馬が描かれた幕でステージ全体が覆われていて、これがライブ開幕と同時に、上方に跳ね上がる仕組みになっていた。

その幕の内側とステージ天井には幾重ものバリライト(可動式ライト)が埋め込まれていて、曲に合わせて自在に変化する光のマジックともいえるステージは、バリライトの可能性をこれでもか! と魅せつけてくれた。

ステージ装飾も豪華なライブだったが、プレイされた曲もツアーのタイトルが示すとおり、ソロ時代のヒット曲を豪華に並べたセットリストで、ひょっとしたら Genesis 時代の曲も…という期待も初めはあったが、それらが付け入る隙は全くなかった。

横浜アリーナの席はここでも幸運にもフロア席の前方、ステージから約20列目くらいの前過ぎず、そしてフロア席の中でも後方過ぎない、ベスト・ポジションだった。バリライトの効果も良く見える位置で、ステージ全景が視野に収まるという、ライブを見るにベストな位置で見られた数少ないコンサートのひとつでもあった。

ヒット曲が並べられたセットリストは大いに満足だったし、途中で Phil Collins のドラム・ソロや、このツアーに帯同していた Chester Thompson とのドラム・デュエットにも満足。そして『Separate Lives』や『Easy Lover』ではオリジナルに近いデュエットが再現されるなど、ショーマンシップにも長けたステージだった。

最後の曲『Take Me Home』では、最初に跳ね上がった幕が徐々に閉められていき、最後に Phil Collins がひとりだけ回転木馬の前に立ち、長丁場のステージに幕を下ろすという構成だった。ステージにひとり残された Phil Collins が丁寧に挨拶をしてステージを去る光景も、他の大物アーティストのコンサートとまた違う終わり方だった。

このツアーの模様は、この CD 版の『Serious Hits… Live!』に加えて、ベルリンでのライブをフル収録した映像版もリリースされた。こちらはまだ日が明るい中で始まったコンサートが、徐々に暗闇が訪れていく中で進んでいく構成もみどころのひとつ。『Two Hearts』では会場全体を見渡すショットがあるが、会場全体が大きなうねりとなって一体感を表している模様は、野外スタジアム・コンサートの素晴らしさを感じさせるシーンでもあった。

『Serious Hits… Live!』
Something Happened On The Way To Heaven
Against All Odds (Take A Look At Me Now)
Who Said I Would
One More Night
Don't Lose My Number
Do You Remember?
Another Day In Paradise
Separate Lives
In The Air Tonight
You Can't Hurry Love
Two Hearts
Sussudio
Groovy Kind Of Love
Easy Lover
Take Me Home

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