TOTO／『Dune』

この『Dune』は TOTO のアルバムとして紹介しようか、それとも映画のサウンドトラックとして紹介しようか、迷うところだが、ここでは敢えて TOTO のアルバムとして紹介する。

映画『Dune(邦題:砂の惑星)』は1984年12月にプレミア公開が行われた。1965年に Frank Herbert によって書かれた同名タイトル作を映像化したものだが、監督にはこの頃『Eraserhead』や『The Elephant Man』の監督として知られていた David Lynch を起用。プロデューサーには大作映画にお馴染みの Dino De Laurentiis がクレジットされていたが、このふたりの組み合わせは全く噛み合わないのでは…と、当時は思った。

主演は後に David Lynch が監督する『Twin Peaks』で主演を務めた Kyle MacLachlan が映画デビューを飾り、その適役に The Police の Sting が、さらには『The Exorcist』などに出演のベテラン俳優 Max von Sydow の名前がクレジットされていた。

『Dune』に TOTO が関わったのは4作目『TOTO IV』から5作目『Isolation』の間だと思われ、『Isolation』で新ボーカリスとして起用される Fergie Frederiksen も『Dune』の制作に名を連ね、TOTO のメンバーが全てのインストルメンタルで関わっている。ただし、9曲目の『Prophecy Theme』だけは Brian Eno、Daniel Lanois、Roger Eno の3人がライターとしてクレジットされている。

また、Vienna Symphony Orchestra の指揮には David Paich の父、Marty Paich があたっている。

TOTO らしい空間の広がりが感じられるサウンドトラック・アルバムで、『Dune (Desert Theme)』と『Take My Hand』では TOTO のオリジナル・アルバムでも聴けるような曲に仕上がっている。アルバム冒頭の『Prologue』には映画のナレーションが入っているが、このような曲は少なく、ほとんどが TOTO のメンバーによるインストルメンタル曲となっている。

ロック・バンドによるサウンドトラックといえば、真っ先に思い浮かぶのが Queen の『Flash Gordon』だが、この『Dune』とは幾つかの共通点があり、まずプロデューサーはどちらも Dino De Laurentiis が務めている。俳優の Max von Sydow がどちらにも出演し、そして、どちらも大金が投じられたがヒットに恵まれなかった点も共通、どちらもカルト的な人気(?)を誇っている。

そしてサウンドトラックを担当した Queen と TOTO にとって、その長いキャリアにおいて、ファンの記憶にあまり残ることのないアルバムだという点も共通だろう。

しかし、Queen の『Flash Gordon』はまだリイシューなどの機会にカタログから落ちることはないが、TOTO の『Dune』はもはやその存在を記憶しているファンがいるのだろうか…? と思われるようなアルバムになっている。

オリジナルのサウンドトラックは1984年にリリースされたが、1997年には曲を追加し、ジャケットも Kyle MacLachlan が大きくフューチャーされたバージョンでリイシューされている。しかし、このリイシュー盤では TOTO が制作に関わっているイメージがほとんど感じられない。

『TOTO IV』が成功して、次のアルバム制作まで時間がたっぷりあった TOTO のメンバーが手がけた実験作が、この『Dune』のサウンドトラックではないかと思う。

『Dune』
Prologue
Main Title
Robot Fight
Leto's Theme
The Box
The Floating Fat Man (The Baron)
Trip to Arrakis
First Attack
Prophecy Theme
Dune (Desert Theme)
Paul Meets Chani
Prelude (Take My Hand)
Paul Takes the Water of Life
Big Battle
Paul Kills Feyd
Final Dream
Take My Hand

タグ：Soundtrack TOTO 1984