Mick Jagger／『Wandering Spirit』

The Rolling Stones が Steel Wheels/Urban Jungle Tour 終了後にバンドとしての活動を休止していた間、各メンバーは精力的にソロ活動に動き、Mick Jagger も通算3枚目のソロ・アルバム『Wandering Spirit』を1993年2月にリリースした。

きのう取り上げた Ronnie Wood の『Slide On This』の記事で Mick のこのアルバムを紹介したことで、また聴きたくなって取り出してきたが、この Mick の3枚目のソロ・アルバムは前にリリースした2枚のソロ・アルバムに比べてバンドとしてのサウンドが生き生きとしていた。

Mick が1980年代にリリースした2枚のソロ・アルバムは、その当時の先端のサウンドを取り上げ、流行に敏感な Mick らしいアルバムに仕上がっていたが、その2枚のアルバムで聴けたサウンドは決して The Rolling Stones では出来ないサウンドだった。しかし、この3枚目のソロ・アルバム『Wandering Spirit』ではバンドの奏でる生のサウンドをメインに据え、前2枚のソロとは明らか違う方向性だった。

このアルバムに収められた14曲は The Rolling Stones のアルバムに入っていてもおかしくない曲が多く、ここにもし Keith Richards のギターと Keith の歌う曲が何曲かあれば The Rolling Stones の新作にもなっていたかも…と思えるアルバムだった。

このアルバムを Mick と共にまとめ上げたのは1980年代に The Beastie Boys や Run D.M.C. などをプロデュースした Rick Rubin で、最初にこの名前を聞いたときは、また Mick らしい人選だと思った。そして、また前2作のソロのように The Rolling Stones とは全く方向性の異なるアルバムになるとも思った。(しかし、これはいい意味で裏切られた!)

『Wandering Spirit』は1曲目の『Wired All Night』から一気に引き込まれ、Lenny Kravitz がボーカルに参加した6曲目の『Use Me』までいい曲が続いた。アルバムの後半はやや失速気味にも感じたが、1980年代の2枚のソロとは明らかに Mick の意気込みが違うと感じられたアルバムだった。

Mick のソロには新旧多くのゲストが参加することも話題になったが、この『Wandering Spirit』でもその顔ぶれは賑やかだった。

Steel Wheels/Urban Jungle Tour でキーボードを担当した Matt Clifford がストリングスのアレンジなどで参加し、Ronnie のソロ『Slide On This』でベースを弾いていた Doug Wimbish がこの Mick のソロにも参加。ベースは他にも Red Hot Chili Peppers の Flea が3曲で弾いていた。

また Pearl Jam のアルバムのプロデュースで知られる Brendan O'Brien がギターで参加していたり、The Rolling Stones の『Sticky Fingers』などのアルバムに参加した Billy Preston もこの『Wandering Spirit』でピアノやオルガンをプレイしていた。

こういう人材をウマく配置してバンドとしてのサウンドを意識したことも『Wandering Spirit』の評価が高かった理由の1つだろう。結果、『Wandering Spirit』は全米チャートで最高11位、全英チャートで最高12位を記録。全米ロック系チャートでは『Sweet Thing』が最高34位、『Wired All Night』が最高3位、そして『Don't Tear Me Up』がとうとう No.1 の座についた。『Wandering Spirit』はアメリカで50万枚を売上げてゴールド・ディスクも獲得した。

Wandering Spirit
Wired All Night
Sweet Thing
Out Of Focus
Don't Tear Me Up
Put Me In The Trash
Use Me
Evening Gown
Mother Of A Man
Think
Wandering Spirit
Hang On To Me Tonight
I've Been Lonely For So Long
Angel In My Heart
Handsome Molly

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