Ronnie Wood／『Slide On This』

リイシューされた『Exile on Main St.』が全英チャートでは1994年の『Voodoo Lounge』以来となる No.1 を記録した The Rolling Stones だが、この当時のメンバーには今回紹介する Ronnie Wood はまだいなかった。その Ronnie が1992年にリリースしたソロ・アルバム『Slide On This』が今回紹介するアルバムになる。

1992年当時の The Rolling Stones は1989年にリリースした『Steel Wheels』に伴なうワールド・ツアーが終了し、次回作『Voodoo Lounge』がリリースされるのも、まだ2年先のことだった。

The Rolling Stones としての活動が一時休止していたこの期間、Mick Jagger は通算3枚目のアルバム『Wandering Spirit』を1993年2月に、Keith Richards は通算2枚目のソロ・アルバム『Main Offender』を1992年10月に、Charlie Watts は自身の名前を冠した初のソロ・アルバム『Warm & Tender』を1993年12月に、それぞれリリースしていた。

メンバーのソロ活動が活発になっていたこの期間に Ronnie は他の3人の誰よりも早く、この『Slide On This』を1992年8月にリリースした。Ronnie のソロ名義のアルバムは1981年の『1234』以来、実に11年ぶりのことだった。

この『Slide On This』には Charlie もドラムで数曲に参加し、Steel Wheels/Urban Jungle Tour でバックを務めたメンバーで Chuck Leavell がピアノで、Bernard Fowler がキーボードやバック・ボーカルで参加していた。

他にも Def Leppard のボーカル Joe Elliott や U2 のギタリスト The Edge、ストリングのアレンジに Michael Kamen がこのアルバムに参加し、かつて Ronnie と Faces で活動を共にした Ian McLagan もキーボードでこの『Slide On This』に関わっていた。

また Living Colour のベーシスト Doug Wimbish も参加し、Ronnie とはまた違うスタイルのベースを披露していた。この Doug Wimbish は同時期に制作された Mick の『Wandering Spirit』にも参加していた。

新旧の友人に囲まれて作られた『Slide On This』は The Rolling Stones のアルバムでなかなか聴くことのできない Ronnie のボーカルをたっぷり楽しめるアルバムで、Ronnie のボーカリストしての能力を改めて思い知らされもした。

このアルバムでは古くから伝わる『Ragtime Annie』のような曲でフィドルの楽しいプレイが聴けたり、Ronnie の奥方の名前をタイトルにした『Josephine』や唯一チャートインを果たした『Show Me』では軽快な Ronnie ならではのロックンロールが楽しめた。

バラードの『Always Wanted More』ではアルバムにクレジットはされていないが、Keith のようなボーカルがバックに聴こえたりもした。

The Rolling Stones のアルバムでは Ronnie の曲が採用されることはなかなかないが、この『Slide On This』ではそんな鬱憤を晴らすかのように、小気味いい曲がたくさん詰まっていた。この『Slide On This』のリリース後には Ronnie の単独ツアーも行われ、『Slide On Live』というライブ盤も翌1993年にリリースされた。こちらもライブでメイン・アクトを務める Ronnie が楽しめる必聴のアルバムでお勧めの一枚だ。

Slide On This
Somebody Else Might
Testify
Ain't Rock And Roll
Josephine
Knock Yer Teeth Out
Ragtime Annie
Must Be Love
Fear For Your Future
Show Me
Always Wanted More
Thinkin'
Like It
Breathe On Me

タグ：1992 Ronnie Wood