Cheap Trick／『Busted』

1988年リリースの『Lap of Luxury』で華々しく復活を遂げた Cheap Trick。ベースの Tom Petersson も復帰した『Lap of Luxury』では曲作りに外部ライターも起用していたが、この『Busted』でもその手法をとり、プロデューサーも前作に続けて Richie Zito を起用。明らかに前作で成功した手法を踏襲したつくりのアルバムになっていた。

しかし、バンド初の全米 No.1 を記録した『The Flame』に似たパワー・バラードの『Can't Stop Fallin' Into Love』に二番煎じの雰囲気は拭えず、また、前作から引続きライター陣のひとりに起用された Diane Warren が手掛けた『Wherever Would I Be』も今ひとつの出来。

皮肉なことに前作でヒットした手法をマネたこの2曲はシングル・カットされたが、『Can't Stop Fallin' Into Love』は全米チャートで最高12位と Top10 入りを果たせず、『Wherever Would I Be』に至っては全米チャートで最高50位止まりと、その思惑とはかけ離れた結果しか残せなかった。

ヒット確実の目論見が外れた『Busted』は全米チャートでも48位が最高と、プラチナ・ディスクを獲得して最高16位を記録した『Lap of Luxury』とは全く当てが外れる結果になった。

そして『Busted』リリースのおよそ1年後。Cheap Trick はデビュー盤以来の付き合いだったレーベル Epic とも契約が解消されてしまった。

では、そんなに酷いアルバムなのか? と聞かれると、確かにヒットを狙ったとも思える先に挙げた2曲は如何にもなつくりで、あまり好きな曲ではなかったが、他の曲には Cheap Trick らしいパワーポップなつくりの曲もあり、それ程悪いアルバムではなかった。

アルバムのトップを飾る『Back 'N Blue』も外部ライターを交えて作られた曲だったが、Cheap Trick の曲としては合格点があげられると思う。タイトル曲の『Busted』と『You Drive, I'll Steer』は Robin Zander と Rick Nielsen のふたりが作った曲だけあって、このアルバムで最も好きな曲に数えられる。

このふたりに Tom Petersson が加わり作られた『I Can't Understand It』もライブでファンとの掛け声が楽しめるライブ映えする曲に思えるし、やはり Tom が関わった『Had To Make You Mine』もまた『Busted』では好きな曲の1つだ。

オリジナルのアルバムとしての『Busted』は Roy Wood 作の『Rock 'N' Roll Tonight』で終わりだが、この曲はバンド活動初期の頃からプレイされた曲で、こういう古い曲まで引っ張りだしてきたところに、この当時の Cheap Trick が曲作りに苦労していた感が窺える。

『Busted』では Chrissie Hynde を迎えた『Walk Away』まで収録されている。もっとメンバー中心の曲で構成されていたら、違った雰囲気に仕上がっていたかもしれないが、当時のレーベル Epic は前作に習った手法を踏襲すれば再びヒットを確実に狙えると思っていたのだろう。

『Lap of Luxury』でシーンに見事復活した Cheap Trick だったが、皮肉にも『Busted』という単語の持つ意味のとおりの結果を迎えてしまった。

Busted
Back 'N Blue
I Can't Understand It
Wherever Would I Be
If You Need Me
Can't Stop Fallin' Into Love
Busted
Walk Away
You Drive, I'll Steer
When You Need Someone
Had To Make You Mine
Rock 'N' Roll Tonight
Big Bang (日本盤のみ収録)

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