TOTO／『Through The Looking Glass』

2010 FIFA ワールドカップの南アフリカ大会、決勝戦でスペインが勝った後のスタジアムでは Bob Marley の1980年のシングル『Could You Be Loved』が大音響で流されていた。

この曲は1980年代序盤に『Africa』などのヒット曲を持つ TOTO が2002年にリリースした『Through The Looking Glass』にも収められ、このアルバムは『Could You Be Loved』を含む全11曲がカバー曲で構成されていた。

Lewis Carroll の『Alice's Adventures in Wonderland(邦題:不思議の国のアリス)』の続編『Through The Looking Glass(邦題:鏡の国のアリス)』がタイトルに冠されたこの TOTO のアルバムは2000年代に入って初めてのスタジオ・アルバムでもあった。

1999年にリリースされた前作『Mindfields』で久々に TOTO に復帰した Bobby Kimball は『Through The Looking Glass』でも引続き健在ぶりを発揮。Bobby Kimball は『Mindfields』リリース後のワールド・ツアーにも帯同し、その模様はライブ盤『Livefields』でも聴くことができた。

『Through The Looking Glass』のリリース後に TOTO はバンド結成25周年を記念したワールド・ツアーを行い、そのライブ盤『Live in Amsterdam』を DVD も含め2003年にリリースしている。

『Through The Looking Glass』をリリースした頃の TOTO には、もはや1980年代序盤の頃の勢いはなくなってしまったが、このアルバムで聴ける11曲は、メンバーが昔から慣れ親しんでいることもあってか、どの曲もとてもリラックスした感じで、大きくアレンジを崩すこともなく、TOTO らしいカバー曲に仕上がっていた。

時折、メンバーが披露するソロ・パートも手練れなアーティストが揃っている TOTO だけあって、変に技巧に突っ走るようなソロもなく、安心して聴くことができた。

またスタジオ・アルバムだからかもしれないが、TOTO に復帰して2作目となる Bobby Kimball の声も、全盛期の頃と比べても同じくらいのハリがあるように聴こえた。

この『Through The Looking Glass』には TOTO 創設時からのメンバーである David Paich もまだ名を連ね、Porcaro 兄弟の次男 Mike もまだ健在だった。Mike は25周年記念ツアーにも同行していたが、その後、難病といわれる ALS(筋萎縮性側索硬化症)を患い、TOTO の活動から離れてしまった。

TOTO の実質ラスト・アルバム『Falling in Between』に伴なうツアーでは、このふたりは同行せず、バンド結成時からのオリジナル・メンバーは Steve Lukather の一人だけになってしまった。

『Through The Looking Glass』で見せた肩の力が適度に抜けた感じで、また新しいアルバムを聴きたかったが、TOTO 唯一のオリジナル・メンバーになってしまった Steve Lukather は2008年に TOTO の終わりを発表した。

しかし2010年2月、ALS と闘う Mike のために TOTO としてヨーロッパ・ツアーを行うと発表。このツアーにはオリジナル・メンバーの David Paich や Steve Porcaro に加え、Simon Phillips と Joseph Williams という歴代メンバーも参加。Mike に代わるベーシストには Nathan East がゲスト参加するとも発表された。

Through The Looking Glass
Could You Be Loved (Bob Marley)
Bodhisattva (Steely Dan)
While My Guitar Gently Weeps (The Beatles)
I Can't Get Next To You (Al Green)
Living For The City (Stevie Wonder)
Maiden Voyage/Butterfly (Herbie Hancock)
Burn Down The Mission (Elton John)
Sunshine Of Your Love (Cream)
House Of The Rising Sun (Animals)
Watching The Detectives (Elvis Costello)
It Takes A Lot To Laugh, It Takes A Train To Cry (Bob Dylan)

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