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Pink Floyd/『Animals』 [CD]

Animals.jpg1973年に『The Dark Side Of The Moon』、1975年に『Wish You Were Here』とヒット作を連続してリリースした Pink Floyd が1977年にリリースした通算10枚目のスタジオ・アルバムがこの『Animals』だった。英2位/米3位を記録した『Animals』はアメリカだけで400万枚以上のセールスを挙げた。

イラストのように見えるジャケットはサウス・ロンドンにある実在のバターシー発電所(Battersea Power Station)で、Roger Waters とデザイン集団 Hipgnosis の Storm Thorgerson のふたりがデザイン。巨大な煙突の間を飛ぶ豚のバルーンがコントロールできなくなり行方不明になるという騒動もこのジャケット制作時には起きている。

この『Animals』というアルバムはこれ以前にリリースされた2枚のアルバムと1979年リリースの2枚組『The Wall』という巨大なアルバムの間に挟まれ、個人的にはあまり聴く機会の多くないアルバムだった。『Animals』には3つの動物が曲のタイトルにあり、当時の LP でA面に2曲、B面に3曲の合計5曲が収められていた。

『Animals』は Roger Waters によるコンセプト・アルバムのかたちを構成し、George Orwell が1945年に出版した『Animal Farm (邦題:動物農場)』が、その源に使われている。

George Orwell の書いた世界で「豚」は経営者や指導者といった人々を導く立場の側。「犬」はその「豚」に忠実に従う立場で敵対する存在を弾圧/粛清する側。そして「羊」は「豚」に雇われる立場や「豚」に反逆する側として描かれ、それらがこの『Animals』では Roger Waters により「豚」は資本家、「羊」は市民、「犬」はインテリとして扱われていた。

この3種類の動物は LP のA面とB面のレーベルにもデザインされ、『Dogs』を含むA面では魚眼レンズを通した「犬」が、B面には「豚」と「羊」がやはり魚眼レンズを通して映されていた。

各曲にはそれぞれの動物の鳴き声(鳴きマネ?)もあり、それぞれの動物で例えられた役割が Roger Waters の描いた詞の世界では、より強大な力を持っているように描かれていた。

A面は1分半の『Pigs On The Wing 1』に続いて17分に及ぶ『Dogs』の2曲のみで、『Dogs』では Roger Waters の描く世界と並んで David Gilmour によるトーキング・モジュレーターやギター・ワークが大きな聴きどころでもあった。David Gilmour はこの『Dogs』では Roger Waters とボーカルも分けあっている。

この『Animals』で聴ける Pink Floyd のサウンドは前2作の雰囲気と全く異なりアグレッシブなプレイが目立ち、Roger Waters の書いた詞とともに、この後の『The Wall』に繋がるようなタイプの曲が目立った。

『Wish You Were Here』では初期のメンバー Syd Barrett を思う個人的な面も扱われたが、『Animals』ではそのような個人的な思いは姿を消し、社会に漂う不満や、それに対する怒りなどが取り上げられていた。

『Animals』がリリースされた1970年代後半はパンクが台頭してきた頃で、Pink Floyd のようなバンドはややもするとパンクの反対に位置する象徴として槍玉にも挙げられ、そういった世の中の事情を Pink Floyd なりに反映し、George Orwell の世界を Roger Waters なりに解釈したコンセプト・アルバムがこの『Animals』だった。

そして Roger Waters の世界がより先鋭化する『The Wall』へと続く過程にあったアルバムがこの『Animals』であったと思う。

Animals Animals (Remastered) - Pink Floyd
Pigs On The Wing 1
Dogs
Pigs (Three Different Ones)
Sheep
Pigs On The Wing 2

タグ:Pink Floyd 1977


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seawind335

確かに、このジャケットは鮮烈な印象が残っています。

次の「The Wall」のインパクトが強いので、発表の順番という偶然により、作品としての印象が薄くなっている感があるのは、残念ですね。
by seawind335 (2010-12-11 17:08) 

MCMLXV_65

強力なアルバムに前後を挟まれ、あまりいい評判を聞かないアルバムなんですが、久しぶりに何度も繰り返して聴きました。

今から振り返って聴くと『The Wall』の予感を感じさせるアルバムなんですが、『Wish You Were Here』の路線を予想すると「あれ?」っと思ってしまう内容なので評価も分かれてしまったんではないでしょうか。歌詞の内容は結構辛辣でもあり、悲しくもあります。
by MCMLXV_65 (2010-12-11 17:49) 

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