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The Pretenders/『Get Close』 [CD]

Get-Close.jpg前作『Learning To Crawl』から3年近い間隔をおいて1986年11月にリリースされた The Pretenders の通算4枚目のアルバム『Get Close』。3枚目のアルバムまでジャケットには4人のメンバー全員が写っていたが、この『Get Close』では表ジャケットに写るのは Chrissie Hynde だけ。他の3人のメンバーは裏ジャケットに写っていたが、このジャケットが新たな The Pretenders のかたちを物語っていた。

ドラッグが原因でふたりのオリジナル・メンバーが亡くなり、新たにふたりのメンバーを補充して制作された『Learning To Crawl』でドラムを叩いていた Martin Chambers は『Get Close』の制作から外れ、ドラムは曲ごとに Simon Phillips や Steve Jordon、Blair Cunningham の3人が担当。Martin は『I Remember You』の1曲だけでしかドラムを叩いていなかった。

『Learning To Crawl』まで The Pretenders のサウンドはベース、ギター、ドラムの3ピースに Chrissie のボーカルを加えたかたちが基本だったが、『Get Close』ではシンセサイザーやオルガンなどキーボード系の音が曲に彩りを与えていた。

『Get Close』からの1stシングルになった『Don't Get Me Wrong』でキーボードを担当した Wix こと Paul Wickens は、その後、ギターの Robbie McIntosh とドラムの Blair Cunningham と共に Paul McCartney のアルバム『Unplugged (The Official Bootleg)』や『Off The Ground』に参加。それ以降、Paul のツアーやアルバムで欠かせないメンバーになっていった。

『Get Close』の1曲目は後半からファンの歓声が加わってライブテイクのように変化する『My Baby』から始まる。『Get Close』の前半はインパクトのある曲が少なく、唯一、4曲目の『Dance!』が実験的な試みがある面白い曲だった。この曲でもアクセントを与えていたのはオルガンやシンセサイザーの音で、ギターではなかった。

また『Get Close』の前半にある『Light Of The Moon』は David Bowie のアルバムで活躍していた Carlos Alomar が作曲に関わり、Chrissie を含む The Pretenders のメンバーは誰も曲作りに関わっていない曲だった。

アクセントに欠ける前半の5曲に対して、『Don't Get Me Wrong』で始まる後半は変化に富んでいた。Steve Jordon がドラムを叩く『Don't Get Me Wrong』はデビュー当時の The Pretenders で特徴だった Martin が叩く激しいドラムと明らかにスタイルの異なる曲だったが、軽やかな Chrissie のボーカルが魅力の曲は英米双方のチャートで最高10位を記録し、1982年の『Back On The Chain Gang』以来となる英米でヒットしたシングルになった。

続く『I Remember You』ではレゲエの雰囲気が漂い、『How Much Did You Get For Your Soul?』で聴ける Chrissie のボーカルは聴き慣れた従来のスタイルで、デビュー当時の曲に通じるようなタイプの曲だった。

ここまでの3曲との対比となるような『Chill Factor』と『Hymn To Her』の2曲のバラードは完成度も高く、『Hymn To Her』は『Get Close』からの2ndシングルに選ばれ、全英チャートで最高8位をマークした。

『Get Close』の最後は Jimi Hendrix の『Room Full Of Mirrors』で締め括られる。この曲も『Get Close』では好きな曲で、この曲では Carlos Alomar がパーカッションで参加し、この1曲だけプロデュースは Steve Lillywhite が務めていた。Steve Lillywhite といえば U2 の初期のアルバムのプロデューサーとしても有名だが、この『Room Full Of Mirrors』で聴けるギターの音はどことなく U2 を思わせる雰囲気だった。

『Room Full Of Mirrors』以外の10曲でプロデューサーを務めていたのは Bob Clearmountain と Jimmy Iovine のふたりで、それまでの3枚のアルバムでプロデューサーを務めていた Chris Thomas が離れたこともバンドのスタイルが変化した要因の1つになったと感じられた。

なお、4曲目の『Dance!』は LP 時代には5分弱のバージョンだったが、CD 版『Get Close』では6分を越すロング・バージョンに差し替えられている。

Get-Close.jpgGet Close Get Close (Remastered) - Pretenders
My Baby
When I Change My Life
Light Of The Moon
Dance!
Tradition Of Love
Don't Get Me Wrong
I Remember You
How Much Did You Get For Your Soul?
Chill Factor
Hymn To Her
Room Full Of Mirrors


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コメント 2

seawind335

新年明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。

「Don't Get Me Wrong」・・・懐かしいですね。この曲(アルバム)を機にバンドとしても、音楽的に拡がりが強く出て来たような気がします。

しかし、Chrissie Hynde は、格好良かったな・・・
by seawind335 (2011-01-02 18:21) 

MCMLXV_65

seawind335さん、あけましておめでとうございます。こちらこそ、今年もよろしくお願いします!

『Don't Get Me Wrong』はThe Pretendersのデビュー当時を知る身として、激しさがなくなり少しスッキリしてしまったなぁとも感じた曲でした。この頃を境にバンドの方向性は仰るようにパンク一辺倒から脱却したかのようでしたネ。ChrissieさえいればThe Pretenders! という姿勢もカッコ良かったです。
by MCMLXV_65 (2011-01-02 18:41) 

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