Jeff Beck／『Live and Exclusive from the Grammy Museum』

最新アルバム『Emotion & Commotion』に次いで Jeff Beck から届けられたアルバムは、2010年4月22日にカリフォルニア州ロサンゼルスにある Grammy Museum で行ったステージを収めたライブ盤だった。

このライブ盤、またも流通形態が特殊で当初はアメリカの Amazon に CD-R というかたちでラインアップされ、その後、日本でも一般流通ルートにやはり CD-R というかたちで並んだ。そして一時は2010年の年末にリリース予定とあったが、遅れに遅れて、ようやく1月下旬に手元に届いた。

このライブでは3月にリリースされた『Emotion & Commotion』から『Corpus Christi Carol』『Hammerhead』『Over The Rainbow』『Nessun Dorma』の4曲が披露され、他にオリジナル曲でプレイされたのは1999年の『Who Else!』から『Brush With The Blues』の1曲のみで、それ以外の3曲はカバーだった。

5曲目の『A Day In The Life』は The Beatles の1967年の曲で、ここ最近のライブで定番のカバー。『How High The Moon』は1940年のブロードウェイ・ミュージカル『Two For The Show』で使われたジャズのスタンダード曲。そして最後にプレイされた『People Get Ready』は1985年の『Flash』に収録された Curtis Mayfield のカバーで、Rod Stewart と久々の共演を果たした曲だ。

Grammy Museum のライブ盤にクレジットされたメンバーはキーボードに Jason Rebello、ドラムに Narada Michael Walden、ベースに Rhonda Smith と、ここ最近のツアーで Jeff Beck のバックを務める3人がこのライブでも顔を揃えていた。

『Emotion & Commotion』からの曲はライブでも厳かな雰囲気に包まれ、その再現力に驚かされるが、このライブ盤で好きな曲は『Who Else!』からの『Brush With The Blues』や、意外な選曲だったスタンダードな『How High The Moon』の2曲だった。前者では Narada Michael Walden のドラムと Jeff Beck のギターの迫力あるプレイが楽しめ、後者は Jeff Beck の弾くロカビリーなスタイルと Rhonda Smith の囁くようなボーカルがスタンダードな雰囲気をより高めていた。

Jeff Beck は1993年に『Crazy Legs』という Gene Vincent のトリビュート・アルバムをリリースしているが、『How High The Moon』はまさにこの『Crazy Legs』に収録された曲に近いタイプの曲で、Jeff Beck の遊び心が詰まったプレイが披露されていた。

そして Rod Stewart のボーカルをギターで再現した『People Get Ready』も思わず聴き入ってしまった。もちろん『Emotion & Commotion』からの曲もクォリティは高いが、それ以外の曲に Jeff Beck というキャラクターがより表れていると感じるライブ盤になっていた。

惜しい点は1曲終わるたびにフェードアウトする編集がされ、このライブ盤に収められた8曲に繋がりが感じられないところだろうか。Grammy Museum でのステージが実際にどのような構成だったか不明だが、曲の余韻に浸る前にアッと言う間にフェードアウトしてしまう編集には違和感があった。

8曲で30分ちょっとしかない Jeff Beck の最新のライブ盤は入手に少々手間がかかるが、その手間をかける価値があるライブ盤だと思う。

Live and Exclusive from the Grammy Museum
Corpus Christi Carol
Hammerhead
Over The Rainbow
Brush With The Blues
A Day In The Life
Nessun Dorma
How High The Moon
People Get Ready

タグ：Jeff Beck 2010 ライブ盤