Van Halen／『Women and Children First』

Van Halen はアルバムをリアルタイムで聴き始めたのが『MCMLXXXIV(1984)』だったこともあり、ボーカルが David Lee Roth の頃より Sammy Hagar 時代に好きなアルバムが多い。

David Lee Roth 時代の Van Halen のアルバムは数年前に紙ジャケット仕様でデビュー盤から『MCMLXXXIV』までの6枚がリイシューされたのをきっかけにして初めて聴いてみたが、その中でこの3rdアルバム『Women and Children First』が意外にも好きなアルバムになっていった。

Van Halen のファンにはこの『Women and Children First』はあまり人気がないアルバムらしく、シングルも1曲目の『And The Cradle Will Rock...』だけで、全米チャートでも最高55位と決してヒットしたとは言えない結果に終わっている。

だが全米アルバム・チャートでは前作『Van Halen II』に続いて最高6位をマークし、売上げ面では300万枚を突破。デビュー盤の1000万枚、2ndの500万枚に比べればセールス面で劣る『Women and Children First』だが、それでも300万枚を売れたということは評価できる点だろう。

そしてこの『Women and Children First』は初めて Van Halen の4人による曲のみで構成されたアルバムでもあった。他人名義で作られた曲に頼らず、メンバー4人が作った曲だけで構成されたアルバムということは、Van Halen というバンドにはとても意義のあることだったのではないだろうか。

オリジナルのリリース当時、 LP のA面とB面に収められた曲は、それぞれのサイドの始まりと終わりを十分考慮されて曲が並べられたように感じる。今から考えればA面に4曲、B面に5曲しかない構成はとても少なく感じるが、この短さがアルバムとしての統一感も演出していたと思う。

個人的にはB面に配された5曲が好きだ。Eddie Van Halen のギターが前面にフューチャーされた1分に満たないインストルメンタルの『Tora! Tora!』から続く『Loss Of Control』の構成で、まずグイっと引込まれ、3分ちょっとの『Take Your Whiskey Home』には Van Halen の旨みがたっぷり凝縮されている。

そして David Lee Roth 時代の Van Halen には珍しいアコースティックな『Could This Be Magic?』が、またこの『Women and Children First』で特に好きな曲だ。アコースティックなセットをバックにしてメンバーのコーラスが映えるいい曲で、静かに聴くとこの曲の背景で雨が降る音が収録されていることもわかる。

また『Could This Be Magic?』では Van Halen の曲でとても珍しい女性のバック・コーラスもある。コーラスに参加したのは Nicolette Larson で、Eddie Van Halen がデビュー盤の『Nicolette』に参加したお返しとして『Could This Be Magic?』でのコーラスに参加したようだ。Eddie とは公私に仲が良かったようで、Eddie の最初の結婚で花嫁の付き添い役も務めている。

『Women and Children First』はメンバーの白黒の写真を使ったシンプルなジャケットも好きで、これは Rickie Lee Jones や Joni Mitchell、Carly Simon のアルバム・カバーの撮影で知られる Norman Seeff によるものだった。

そしてオリジナル・リリース時には David Lee Roth のポスターが付属していたが、こちらはドイツ出身の写真家で、VOGUE 誌や PLAYBOY 誌などでも特徴ある写真を発表していた Helmut Newton が手がけていた。

Van Halen の数ある有名なアルバムの中では比較的地味な存在の『Women and Children First』は細かな点でいろいろなこだわりが見え隠れするアルバムで、今では David Lee Roth 時代の Van Halen のアルバムの中では個人的にベストに推したいアルバムだ。

Women and Children First
And The Cradle Will Rock...
Everybody Wants Some!!
Fools
Romeo Delight
Tora! Tora!
Loss Of Control
Take Your Whiskey Home
Could This Be Magic?
In a Simple Rhyme

タグ：1980 van halen