David Bowie／『Heathen』

David Bowie が2000年代に初めてリリースした『Heathen』は日本語で『異教徒』とも訳せるが、このアルバムは9･11以後にリリースされたこともあり、Bowie なりの同時多発テロに対する想いが含まれていると、リリース当時は報じられた。

しかし実際は2000年代当初にリリースを予定していた幻のアルバム『Toy』のためにレコーディングされた素材がこの『Heathen』には一部使われ、歌詞は9･11以前に既に出来上がっていたともされている。だが『Heathen』に収められた曲からは9･11のことを連想させるような雰囲気が大いに感じられた。

幻に終わった『Toy』というアルバムは1960年代の Bowie のあまり知られていない曲を取り上げる予定だったそうで、『Heathen』には『Afraid』など数曲が収録され、他にシングルB面曲としてもリリースされた。

『Heathen』以前の Bowie のアルバムは1作ごとにレーベルを変えリリースされていたが、この『Heathen』は Bowie が立ち上げたレーベル ISO から最初にリリースされたアルバムだった。また、この『Heathen』はかつて『Scary Monsters』で Bowie と共にプロデューサーを務めた Tony Visconti が20年ぶりに復活したアルバムでもあった。

『Heathen』のレコーディングでは Pete Townshend が『Slow Burn』で、Dave Grohl が『I've Been Waiting For You』でギターを弾くという話題もあった。そしてこの『I've Been Waiting For You』は Neil Young のカバーで、他にも『Heathen』には Pixies の『Cactus』と、The Legendary Stardust Cowboy の『I Took A Trip On A Gemini Spaceship』という2つのカバー曲が収められていた。

『Heathen』というアルバムでは3曲のカバーや、ゲスト参加曲がやや明るいロックな曲だったのに対し、Bowie の呟くようなボーカルが特徴で静かに進行する曲があり、アルバム内での曲の対比がくっきりとしていた。

またこの『Heathen』ではふたりのドラマーに加えて Bowie も自らドラムを叩いている曲がある。その3人が叩くドラムの音もアルバムの静かな曲では混沌とした雰囲気を演出しているようで印象的だった。

後に行われた Reality Tour では『Heathen』から多くの曲がセットリストに入り、2000年代の Bowie は面白い! と思わせるに十分な出来のアルバムになっていた。

全英チャートで最高5位を記録した『Heathen』は全米チャートでも1984年の『Tonight』以来となる Top20 入りを果たし、最高14位まで上昇した。シングルも『Slow Burn』と『Everyone Says 'Hi'』『I've Been Waiting For You』の3枚がカットされ、『Everyone Says 'Hi'』は全英チャートで最高20位をマークした。

『Heathen』はまた Bowie のアルバムで初めて SACD 化された一枚で、他に幾つかのボーナス・トラックを追加して度々リイシューも繰り返された。その中でもシングルB面曲など10曲のボーナス・トラックを追加した2007年の紙ジャケット仕様の『Heathen』は、この頃の Bowie の曲が多く聴けることから一番お勧めな『Heathen』かもしれない。

Heathen
Sunday
Cactus
Slip Away
Slow Burn
Afraid
I've Been Waiting For You
I Would Be Your Slave
I Took A Trip On A Gemini Spaceship
5:15 The Angels Have Gone
Everyone Says 'Hi'
A Better Future
Heathen (The Rays)

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