Corinne Bailey Rae／『The Love EP』

Corinne Bailey Rae の2ndアルバム『The Sea』は2010年の暮れに5曲のカバーを収めたジャケット違いの国内盤もリリースされた。その中には Paul McCartney & Wings が1973年に全米 No.1 を記録した『My Love』もあり、Corinne Bailey Rae によるカバーはその独特の声を活かしたアレンジでとても気になる曲だった。

しかし、この1曲のために既に手元にある『The Sea』をもう1枚購入することは考えられなかった。ところが年明け早々、この5曲だけが『The Love EP』というかたちでリリースされた。

『The Love EP』には『My Love』の他に Prince が1979年にリリースした2ndアルバム『Prince』に収録の全米チャートで最高11位を記録した『I Wanna Be Your Lover』や、Bob Marley の1978年の全英チャートで最高9位を記録した『Is This Love』があった。

また1991年にボストンで結成された Belly のデビュー盤『Star』収録の『Low Red Moon』、そして Alfred Hitchcock の1956年の映画『The Man Who Knew Too Much (邦題:知りすぎていた男)』に使われた Doris Day の『Que Sera Sera』が収録されていた。

『The Sea』での Corinne Bailey Rae のイメージから考えると Paul McCartney & Wings の『My Love』は全く違和感なく聴けたが、Prince の『I Wanna Be Your Lover』はそれまでに抱いていた Corinne Bailey Rae のイメージになかったとても明るいポップな曲で、こんな一面もあるのかと驚いてしまった。

また2曲目の Belly の『Low Red Moon』のカバーはハードなギターが全編にわたってフューチャーされた曲で、一瞬 Shirley Manson がボーカルの4人組のバンド Garbage をも連想させた。

Bob Marley の『Is This Love』のカバーは Corinne Bailey Rae のスタイルに沿ったかたちに仕上がっていて、『My Love』と同じくらい Corinne Bailey Rae の曲として完成度が高い曲だった。

ここまでの4曲がスタジオ録音のテイクだったのに対して、最後の『Que Sera Sera』は2010年にワシントン DC にあるクラブで収録された13分に及ぶライブで、Doris Day のオリジナルを Sly & The Family Stone が1973年のアルバム『Fresh』で披露したスタイルに近いカバーでプレイしていた。

13分という表示を見て「どんなライブになっているのか?」と思ったが、『Que Sera Sera』をブルースな感じにまとめあげ、このときのステージでギターを弾いていた John McCallum のボーカルと合わせ終盤に向け徐々に盛り上がる構成になっていた。

Corinne Bailey Rae の歌う曲に男性のボーカルも合わなさそうに最初は思ったが、これがまた新しい発見で男女が絡みつくようなボーカルに聴き入ってしまい、Steve Brown の弾くキーボードの音も盛り上げに一役買っていた。

この『Que Sera Sera』の盛上げがあるおかげで『The Love EP』はたった5曲しかないが短いという感じがせず、ライブの『Que Sera Sera』が終わったあとにちょっとした満足感もあった。

今ならこの5曲入りの『The Love EP』を Amazon などで1000円もしない価格で手に入れられる。既に『The Sea』が手元にあって、それが気に入った方にはこの『The Love EP』も間違いなくお勧めできるアルバムだと思う。

The Love EP
I Wanna Be Your Lover (Prince)
Low Red Moon (Belly)
Is This Love (Bob Marley)
My Love (Paul McCartney & Wings)
Que Sera Sera (Doris Day)

タグ：Corinne Bailey Rae 2011