Boz Scaggs／『Some Change』

Boz Scaggs のアルバムは1977年の『Down Two Then Left』以降、リリースの間隔が徐々に長くなり、この『Some Change』がリリースされたのは1988年のアルバム『Other Roads』から6年近い月日が経っていた。

長年属していたレーベルの Columbia を離れて Virgin から最初にリリースされた『Some Change』は全10曲、時間にして50分も満たないアルバムだった。ちなみに Virgin からリリースされたアルバムは1997年リリースの『Come On Home』と、この『Some Change』の2枚だけで終わってしまった。

この『Some Change』というアルバム。Boz のディスコグラフィではかなり見過ごされがちなアルバムだが、収録されている楽曲にはお勧めな曲が多い。

ジャケットの頬杖をつく Boz の様子から AOR な曲ばかりと思われがちな『Some Change』だが、1曲目の『You Got My Letter』は軽快なロックな曲で、ここでの Boz のボーカルはとても楽しげだ。

Boz のアルバムと言えば TOTO のメンバーがバックを務め堅実なプレイを披露してきたが、この『Some Change』に TOTO のメンバーは誰も参加していない。代わりに著名ミュージシャンが多数参加し、しっかり Boz の周囲を固めていた。

Boz と共に多くの楽器をプレイした Michael Omartian は1979年の Christopher Cross のデビュー盤をプロデュースし、プロデューサーやアレンジャー、ソングライターなどで1980年代にとても多くのアルバムでその名前を目にしたマルチ・タレントなアーティスト。

『Some Change』を Boz と共同プロデュースした Ricky Fataar は1970年代に一時 The Beach Boys のアルバムに参加し、The Beatles のパロディ・バンド The Rutles のメンバーでもあった人物で、『Some Change』ではドラムやキーボードを担当した。

さらに Little Feat のメンバーだった Fred Tackett がギター、Booker T. Jones がオルガン、Marcus Miller がベースをプレイと、『Some Change』で Boz の周辺をベテランのミュージシャンがしっかり固めていた。

他のメンバーの共作した『Call Me』と『Illusion』を除く8曲は全て Boz が書き上げた曲で、ここにも『Some Change』に懸けた Boz の自信が感じ取れた。

スローな『I'll Be The One』は過去の Boz の有名なバラードに及ばないかもしれないが、決して悪くない曲。続く Michael Omartian らとの共作『Call Me』や『Fly Like A Bird』での Boz のボーカルはいい具合に力が抜けて、とてもリラックスした感じのいい曲になっていた。

3分台の曲は『Call Me』と『Fly Like A Bird』の2曲のみで、1曲が長い『Some Change』だが、Boz のボーカルの他に周囲を固めたメンバーのソロ・プレイも充実していて、ステージを見ているような雰囲気も伝わってきた。

飾り気のないジャケットと、あまり多くのアルバムをリリースしない Boz のおかげで熱心なファン以外に忘れられた存在の『Some Change』だが、この暑い夏に涼しい場所をみつけてしばし耳を傾けてほしいアルバムだ。

Some Change
You Got My Letter
Some Change
I'll Be The One
Call Me
Fly Like A Bird
Sierra
Lost It
Time
Illusion
Follow That Man

タグ：Boz Scaggs 1994