Heart／『Bebe Le Strange』

ここ数日で amazon からまとめて購入した Heart のアルバムをいろいろと聴いている。この『Bebe Le Strange』もその中の1枚で、1980年代に入って最初にリリースされた通算5枚目のスタジオ・アルバムを通して聴いたのはこれが初めてだった。

まとめて手に入れた Heart のアルバムを先日「低迷期」の頃のアルバムと書いたが、契約でもめた末にリリースされた『Magazine』や、その同じ年にリリースされた『Dog & Butterfly』は共に全米チャートで最高17位をマークし、後者は200万枚のセールスを記録した。また2ndアルバムの『Little Queen』に至っては1970年の Heart のアルバムの中では最大の300万枚のセールスを記録と「低迷期」どころか、油の乗り切った時期にリリースされたアルバムだった。

そして、この1980年リリースの『Bebe Le Strange』はセールスこそアメリカでは大きく落ちて50万枚に留まったが、全米チャートではそれまでの Heart のアルバムの中で最高となる5位をマークし、最もチャート上では成績の良かったアルバムだった。

『Bebe Le Strange』からの1stシングルには LP 時代にB面のトップを飾った『Even It Up』が選ばれた。この曲では Heart に珍しいホーン・セクションが導入され、ここでは Tower Of Power がその役目を担っていた。

5分を超す大作の『Even It Up』は全米チャートで最高33位をマークし、ヒットの目安となる Top40 入りをクリア。2ndシングルのタイトル曲『Bebe Le Strange』はミッド・テンポなパートとロックなパートが交差する面白い曲で、このアルバムで好きな曲の1つだが、Heart のシングルでは初めて全米チャートで Top100 入りを逃したシングルになり、109位が最高だった。

だが、アルバムの『Bebe Le Strange』はこの2曲のシングル以外に、ブルーズ調の『Down On Me』のような曲や、Nancy Wilson の弾くギターだけの『Silver Wheels』というインストルメンタルも聴きどころで、後半に登場する『Strange Night』も Michael DeRosier のドラムや Howard Leese のギターに Ann Wilson の艶のあるボーカルと絡みつく Heart ならではの曲に仕上がっていた。

さらに、この後に続く『Raised On You』では Nancy がボーカルを務め、Ann の力強いボーカルとは違う Nancy ならではのソフトなボーカルを披露していた。この曲のレコーディング詳細が見あたらないが、Nancy はドラム以外の全てのパートをこの曲ではこなしていたともある。

さらに続く『Pilot』でも Heart のソフトな面は続き、最後の曲『Sweet Darlin'』でもその傾向が続くと思いきや、Ann のボーカルは中盤にかけて盛り上がりを見せていく。Ann の弾くピアノが曲に彩りを加え、この曲では Ann が全ての楽器をプレイしていたとある。

オリジナルの『Bebe Le Strange』はこの『Sweet Darlin'』で終わる40分に満たないアルバムで、Heart の創設メンバーであり、Nancy の恋人でもあった Roger Fisher が脱退して作られた最初のアルバムでもあった。(タイトル曲にのみ Roger の名前はクレジットされている)

2004年のリイシュー盤ではこの頃にレコーディングされたらしいアウトテイクの『Jackleg Man』と、『Break』のライブ・バージョンの2曲がボーナス曲として追加され、特に後者はステジオ・テイク以上の盛り上がりを見せる曲になっている。

Bebe Le Strange
Bebe Le Strange
Down On Me
Silver Wheels
Break
Rockin' Heaven Down
Even It Up
Strange Night
Raised On You
Pilot
Sweet Darlin'
【Bonus Tracks】
Jackleg Man (previously unissued)
Break (previously unissued)

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