Queen／『Rare Cuts Vol.3』

2011年の Queen 結成40周年記念でリリースされた『Deep Cuts』シリーズを真似て、ブートレグ(海賊盤)では『Rare Cuts』シリーズが2011年4月下旬にその第一弾が、6月中旬にその第二弾がリリースされ、このブログでも都度紹介してきた。そして昨年暮れ、その第三弾『Rare Cuts Vol.3』がリリースされ、約1か月遅れでようやく手に入れた。

『Rare Cuts Vol.3』は全部で18曲、約73分を収録。対象となる期間は1977年リリースの『News Of The World』から1982年リリースの『Hot Space』までの5枚のスタジオ・アルバムに収録された曲の数々。

これまで聴いてきた Queen のブートレグは主にライブ盤が多く、オリジナル・アルバム収録曲に関するブートレグはほとんど聴いたことがなかったので、『Rare Cuts Vol.3』に収録された18曲は素直に面白いと思えた。

だが、ブートレグをこれまでライブ/スタジオ音源を分け隔てなく聴いてきたファンには、この『Rare Cuts Vol.3』にある18曲はどう聴こえたのだろう?

公式にリリースされた音源からボーカルだけを抜き取った『We Are The Champions (Acapella Version)』や、前面にフューチャーされた楽器のボリュームを少し絞っただけ(?)に聴こえる『Bycicle Race (Backtrack Remix)』は、特段レアな未発表テイクに思えなかった。それでも Freddie Mercury のボーカルだけで聴かせる『We Are The Champions (Acapella Version)』は、このブートレグのトップを飾るに十分な魅力があった。

この『Rare Cuts Vol.3』にはライブ・テイクも2曲あり、そのひとつは1979年の来日公演から武道館での音源とある『We Will Rock You - Fast Version (Live at the Nippon Budokan 1979)』。もうひとつは同じ1979年のパリ公演からの『Dreamer's Ball (Live from the Pavillon de Paris 1979)』で、こちらは『Live Killers』に収録された同曲のオリジナル音源にも聴こえた。

『We Are The Champions (Acapella Version)』とほぼ同じような処理の『Crazy Little Thing Called Love (Vocal&Guitar Mix)』では Freddie のボーカルと12弦ギター、Brian May のギターだけで構成され、これも新鮮だった。だが、オリジナルのマスターテープからそれらの楽器をミュートしてしまえば容易に作れてしまう安易なテイクにも思えた。

他にこの『Rare Cuts Vol.3』には Ultra 12" Remix とされた『Don't Stop Me Now』『Another One Bites The Dust』『Under Pressure』の3曲があり、『Don't Stop Me Now』と『Another One Bites The Dust』はそれぞれ8分と9分を超えるリミックスが施されていた。

しかし『Under Pressure』の Ultra 12" Remix は1999年リリースの『Greatest Hits III』に収録された Rah Mix のようで、新たなレア音源と感じなかった。

2曲ある『Save Me』の Complete Synth Demo は Freddie のカウントで始まり、シンセサイザーでメロディを聴かせる曲だが、これは本当に Queen のメンバーによるプレイなのか不明。Vocal Demo は Freddie のボーカルだけの1分少々の曲で、Roger Taylor と Brian のコーラスもチラっとだけ聴ける。

そして、この『Rare Cuts Vol.3』で最も注目の音源が『Sandbox (Unreleased Version)』というそのタイトルすら今までに一度も聞いたことのない曲。1980年のスタジオ・アルバム『The Game』の曲が並ぶ中に登場する『Sandbox (Unreleased Version)』は『The Game』レコーディング中のジャム・セッションのようで、2分45秒の中にボーカル・パートはない。

『Play The Game (Alternate Acapella Version)』もまた、Freddie のボーカルだけを抜き取った音源で、途中 Brian のギターと Freddie のアカペラだけが時折聴こえるシンプルなテイク。冒頭の『We Are The Champions (Acapella Version)』もそうだが、こういうシンプルなスタイルにすると Freddie のボーカルは本当に魅力あると感じる。

続く『The Hero / Flash Gordon (Movie End Credit Version)』はそのタイトルどおり、映画『Flash Gordon』のエンド・クレジットにあるバージョンそのままのよう。公式サウンドトラック盤『Flash Gordon』にある『The Hero』がちょっとだけ荒々しくなったようだ。

『Rare Cuts Vol.3』の終盤は1982年リリースのスタジオ・アルバム『Hot Space』からの6曲で占められている。『Staying Power』はアメリカのみプロモーション用に12インチ盤がリリースされているが、そこにある『Staying Power』は5分52秒のバージョンで、この『Staying Power (Promotional 12" Remix)』は5分39秒と少し短い。

『Las Palabras De Amor』から『Backchat』の3曲は Demo Version とあるが、Freddie のボーカルに少し違いがある程度で、それぞれの曲の最終型にほぼ近いかたち。Demo Version と記すなら、もっと曲の初期、構想段階に近いデモを収めてほしかった。

『Calling All Girls』で再び Acapella Version が登場。Roger 作の『Calling All Girls』が Freddie のボーカルだけで聴けるが、ここは作者である Roger のアカペラで聴きたいところ。

と、いろいろ注文もある『Rare Cuts』シリーズの第三弾だが、公式に既出の音源が多くてガッカリした『Rare Cuts Vol.2』に比べれば『Rare Cuts Vol.3』はまだまだ楽しめる内容だった。

本家『Deep Cuts』シリーズは第三弾で終わってしまったが『Rare Cuts』シリーズはまだ1984年のスタジオ・アルバム『The Works』以降にある曲が全く手付かずの状態。1995年のスタジオ・アルバム『Made In Heaven』まで5枚もスタジオ・アルバム残されているだけに、さらに面白い内容で続編がリリースされるのが楽しみだ。(本当は公式なボックス・セットとして、こういう企画を実現して欲しいのだが…)

Rare Cuts Vol.3
We Are The Champions (Acapella Version)
We Will Rock You - Fast Version (Live at the Nippon Budokan 1979)
Don't Stop Me Now (Ultra 12" Remix)
Bycicle Race (Backtrack Remix)
Dreamer's Ball (Live from the Pavillon de Paris 1979)
Crazy Little Thing Called Love (Vocal&Guitar Mix)
Another One Bites The Dust (Ultra 12" Remix)
Save Me (Complete Synth Demo)
Save Me (Vocal Demo)
Sandbox (Unreleased Version)
Play The Game (Alternate Acapella Version)
The Hero / Flash Gordon (Movie End Credit Version)
Staying Power (Promotional 12" Remix)
Las Palabras De Amor (Demo Version)
Action This Day (Demo Version)
Backchat (Demo Version)
Calling All Girls (Acapella Version)
Under Pressure (Ultra 12" Remix)

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