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Bruce Springsteen/『Tunnel Of Love』 [CD]

Tunnel-Of-Love.jpgアメリカだけで1000万枚以上も売れた『Born In The U.S.A.』から3年という間を空けてリリースされたスタジオ・アルバムが、この『Tunnel Of Love』というアルバムだった。

この3年の間に Bruce Springsteen はアメリカ人の女優 Julianne Phillips と1985年5月に結婚。しかし、ふたりはちょうど3年後の1988年5月に離婚し、Bruce はその後、The E Street Band でコーラスやギターを弾く Patti Scialfa と結婚した。

この『Tunnel Of Love』というアルバムの当時の日本盤のオビには「1グラムの愛のために…」というコピーが添えられていたが、このアルバムの中で歌われている内容は、そんな甘いモノではなかった。

『Tunnel Of Love』からはリード・シングルとして『Brilliant Disguise』がカットされた。全米チャートで最高5位を記録したこの曲で Bruce はギター以外の楽器もプレイ。The E Street Band のメンバーはキーボードの Roy Bittan、オルガンの Danny Federici、ドラムの Max Weinberg の3人が参加していた。

『Tunnel Of Love』のアルバム・クレジットに The E Street Band のメンバーは記されていたが、その関わり方は曲に応じて必要最小限のメンバーが Bruce をサポートするかたちで、サックスの Clarence Clemons はこのアルバムで出番はなく、わずかに『When You're Alone』でコーラスに参加するのみだった。

1stシングルの『Brilliant Disguise』の PV は Bruce がカメラを見据えて淡々と歌う姿がワン・カットで撮られたもので、この PV は MTV の Video of the Year や Best Editing の候補にもなった。

この淡々とカメラを見つめて歌う『Brilliant Disguise』では、関係が冷え切ってしまった男と女のことが歌われ、互いが見ているものは本当の自分なのか、それともタイトルの Brilliant Disguise にあるように華麗な仮面をかぶったふたりなのかと問いかけていた。

この『Brilliant Disguise』にあるふたりとは、まさに人気シンガーの Bruce とこの当時の妻で女優の Julianne のことで、ふたりが当初考えていた結婚生活からどんどん離れてしまい、その関係は仮面をつけ互いの役を演じているようだと歌われていた。

アルバムから2ndシングルになったタイトル曲では、遊園地にあるゴンドラに乗って男と女がお化け屋敷に入る様子が描かれていたが、この光景にダブらせ、恋に落ちるのは簡単だけど互いを見失うのも簡単なこと。生きていくのは決して乗り心地のよくない、手に負えないものだと学ばなければと歌っていた。

そして、この『Tunnel Of Love』では、後に Bruce と結婚する Patti がコーラスで参加していた。

Patti は3rdシングルになった『One Step Up』にもコーラスで参加、The E Street Band のメンバーは誰も参加していなかった。この曲では朝起きたら家は冷え切っていて、車もエンジンがかからなかったなどと現実のことを描き、いつも同じことの繰り返しで一歩前進しては二歩後退していると歌っていた。

と、この様な曲の並ぶ Bruce の準ソロ・アルバム的な『Tunnel Of Love』で、唯一、Bruce のロックな面が聴けるのが『Spare Parts』だった。

『Tougher Than the Rest』を挟んでシングル・カットされた『Spare Parts』はイギリスやオーストラリアなど一部の国のみでリリースされ、アメリカではシングル・カットされなかった。

この曲でも The E Street Band のメンバーはドラムの Max、オルガンの Danny に加えてベースの Garry Tallent が参加しているだけで、ハーモニカを吹いていたのはメンバーでない James Wood というミュージシャンだった。

『Spare Parts』では予期せず生まれてしまった子供を育てる若い母親 Janey のことが歌われ、曲の終盤で Janey はその子供を抱いて川の水に浸かるところまで思いつめてしまうが、陽の光を浴びて我に返り、婚約指輪とウェディングドレスを質屋に持っていって幾らかの現金に変えたと締め括られていた。

曲のタイトルにある Spare Parts である予備の部品と、Janey のような傷ついた心がこの世の中を動かしていると、この曲のコーラスでは歌われていた。

アルバム『Tunnel Of Love』の最後は『Valentine's Day』で終わるが、Bruce のアカペラ『Ain't Got You』で始まる『Tunnel Of Love』でこの2曲に The E Street Band のメンバーは誰も参加していない。『Valentine's Day』では「あの娘に逢いたい、早く家に帰りたい」「俺が恐れているのはお前を失うこと」と歌い、「きつく抱きしめて、いつまでも私のあなたと言って欲しい」とあった。

『Tunnel Of Love』のジャケットに写る Bruce の姿は『Born In The U.S.A.』でこびりついてしまった筋肉剥き出しのイメージから、ちょっと優しい男のイメージへと変わっていたが、当時の新婚生活に浸った甘いアルバムではなく、予想と違う新しい生活に戸惑い、実際は厳しい現実の数々だという内容だった。

このアルバムをリリースした後、Bruce は Julianne と離婚して Patti と結婚するが、リリース当時、Bruce の将来は誰にもわからなかった。『Tunnel Of Love』で歌われている内容を歌詞を見ながら聴くと、Bruce の当時の苦しい心境がそこかしこで吐露されていたアルバムだと今なら理解ができる。

Tunnel-Of-Love.jpgTunnel Of Love Tunnel of Love - Bruce Springsteen
Ain't Got You
Tougher Than The Rest
All That Heaven Will Allow
Spare Parts
Cautious Man
Walk Like A Man
Tunnel Of Love
Two Faces
Brilliant Disguise
One Step Up
When You're Alone
Valentine's Day


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