TOTO／『Past To Present 1977-1990』

1990年の春、TOTO として初めて公式なコンピレーション・アルバムがリリースされた。タイトルは『Past To Present 1977-1990』。ここには通算3枚目のアルバム『Turn Back』と5枚目のアルバム『Isolation』にある曲は1つもなく、当時の邦題「グレイテスト・ヒッツ」は過ぎたタイトルだった。

そもそも、このアルバムで初登場のボーカル Jean-Michel Byron による4曲が「グレイテスト・ヒッツ」である訳がない。原題にあるように、このアルバムは1977年という過去 (Past) から1990年というその当時 (Present) までを振り返るという企画の下、作られたアルバムであり、「グレイテスト・ヒッツ」と呼べるアルバムではなかった。

Jean-Michel Byron は当時レーベル側から推されたボーカルという話もあり、ファンの間でもそれほど評価は高くない。当時のチャートの結果も Byron がボーカルの新曲は惨敗。全米チャートでは『Love Has The Power』と『Out Of Love』はランクインを果たせず、TOTO 唯一の全米 No.1 曲『Africa』とカップリングされた『Can You Hear What I'm Saying』ですら全米チャートで結果を残せなかった。

ここまでの活動を振り返りつつ当時の新曲を数曲入れるという趣旨のアルバムに、それまでに誰もその存在を知らないボーカルの曲を4つも入れる必要があったのだろうか…?

しかも、この頃の主流メディア CD を考慮すれば『Past To Present 1977-1990』は65分弱しかないアルバムで、もっと多くの曲を対象にできたのではないだろうか? 完全に対象外とされてしまった2枚のアルバムから『Goodbye Elenore』や『Stranger In Town』というシングル曲を入れることもできただろう。

4つの新曲を除く残りの9曲は、それまでにリリースしてきた7枚のアルバムから外れてしまった2枚のアルバムを除く5枚から選ばれ、多少の偏りもあったが、それまでの代表曲と呼べる曲が並べられていた。

TOTO はころころ変わるボーカルも特徴 (?) で、David Paich の『Africa』、Bobby Kimball の『Hold The Line』、Steve Lukather の『I'll Be Over You』、Joseph Williams の『Pamela』などではボーカルの変遷を辿ることもできた。

だが、1stアルバムからはそんなボーカルの変遷が全く関係ないインストルメンタル曲の『Child's Anthem』を選んで欲しかったし、2ndアルバムからは『All Us Boys』や『White Sister』を、Fergie Frederiksen 時代からは『Angel Don't Cry』を、Joseph Williams 時代からは『Don't Stop Me Now』や『Home Of The Brave』というアルバムの最後を飾る曲も選んで欲しかった。

この手の類のアルバムには必ず選曲に纏わる不満があるが、ジャケットに TOTO を象徴する剣があっただけに、もっとふさわしい選曲で作りこんで欲しかった、残念な思いのあるコンピレーション・アルバムだった。

Past To Present 1977-1990
Love Has The Power
Africa
Hold The Line
Out Of Love
Georgy Porgy
I'll Be Over You
Can You Hear What I'm Saying
Rosanna
I Won't Hold You Back
Stop Loving You
99
Pamela
Animal

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