The Doobie Brothers／『Cycles』

1978年のスタジオ・アルバム『Minute By Minute』の後、The Doobie Brothers はMichael McDonald 在籍時のスタジオ・アルバムとして1980年に『One Step Closer』をリリースしているが、このアルバムだけなぜか、ここ最近の新たなリイシュー対象から外れ、1989年リリースの『Cycles』と続く1991年リリースの『Brotherhood』の2枚のスタジオ・アルバムが 2in1 シリーズとして BGO Records から2011年にリイシューされた。

1989年リリースの『Cycles』はマスタリングに Bob Ludwig の名前があり、当時も音が良かった印象があるが、2011年のリイシューでは新たにデジタル・リマスターもされ、1989年当時の CD より、さらにクリアになったように感じられた。

『Cycles』はスタジオ・アルバムとして1980年の『One Step Closer』以来、9年ぶりのフル・アルバムで、結成当時のオリジナル・メンバー Tom Johnston が復帰して初のスタジオ・アルバムだった。

その Tom がボーカルを務める『The Doctor』は復帰作にふさわしいオープニング・トラックで、この新作からのリード・シングルとして全米チャートで最高9位を記録。ロック系の曲を扱うチャートでは堂々 No.1 に輝いた。

『The Doctor』は Tom の他にふたりの外部ライターも加わっていた曲だったが、Tom の単独作『South Of The Border』は、より初期の The Doobie Brothers を感じさせる曲になっていた。Tom が書いた曲は終盤にも『Wrong Number』が登場し、これも The Doobie Brothers らしいコーラス・ワークが映える曲だった。

Michael McDonald 在籍時のスタジオ・アルバムでは Patrick Simmons が、かつての The Doobie Brothers を思わせる曲を書いていたが、『Cycles』でその役目を担っていたのは、久々に復帰した Tom だった。

それまでのアルバムで The Doobie Brothers らしさを一心に担っていた Patrick は、外部ライターらと『Take Me To The Highway』を書いたが、これもコーラス・ワークが綺麗な曲で、アコースティックな曲ながらも途中に入るエレキトリックなギター・ソロもある、『Cycles』では好きな曲の1つだった。

『Cycles』ではこのふたり以外にパーカッションの Bobby LaKind が Keith Knudsen や John McFee と書いた『Time Is Here And Gone』や、Bobby と Michael McDonald の共作『Tonight I'm Coming Through (The Border)』も収録されていた。

そして『Cycles』にはオリジナル以外に2曲のカバーもあった。1つ目は2曲目に登場する『One Chain (Don't Make No Prison)』で、オリジナルは1974年の Four Tops のアルバム『Meeting Of The Minds』にあった曲。2つ目は LP ではB面のトップに登場する『Need A Little Taste Of Love』で、こちらは1974年の The Isley Brothers のアルバム『Live It Up 』にあった曲だった。

『Need A Little Taste Of Love』は『Cycles』からシングル・カットされ、全米チャートでは最高45位をマーク。ロック系のチャートでは最高3位まで上昇した。

9年ぶりのスタジオ・アルバム『Cycles』は全米チャートで最高17位をマークし、ゴールド・ディスクに認定され、翌1990年には Tom がいる The Doobie Brothers として初来日も果たした。そのときのライブを横浜アリーナで運良くみることができ、そのライブでは Tom がメイン・ボーカルの『China Grove』を聴けたこともあって、Tom の復帰1作目『Cycles』は今でも思い入れのある好きなアルバムだ。

Cycles
The Doctor
One Chain (Don't Make No Prison)
Take Me To The Highway
South Of The Border
Time Is Here And Gone
Need A Little Taste Of Love
I Can Read Your Mind
Tonight I'm Coming Through (The Border)
Wrong Number
Too High A Price

タグ：The Doobie Brothers 1989