Boz Scaggs／『My Time』

今回は、この3月に5年ぶりの新譜をリリースする Boz Scaggs が、1972年の秋にリリースしたスタジオ・アルバム『My Time』を紹介。

この『My Time』も紙ジャケット仕様でリリースされた際に入手したアルバムで、Boz のバンドでベースを弾く David Brown が書いた『Slowly In The West』の他に、Al Green のカバー『Old Time Lovin' 』、そしてニューオリンズ出身の Allen Toussaint のカバー『Hello My Lover』『Freedom For The Stallion』を含む、全10曲で30分ちょっとのアルバムだ。

アラバマ州にある Muscle Shoals Sound Studio で活躍するスタジオ・ミュージシャン、Barry Beckett (ピアノ)、David Hood (ベース)、Eddie Hinton (ギター)、Jimmy Johnson (ギター)、Pete Carr (ギター)、Roger Hawkins (ドラム)らを中心に6曲をレコーディング。残る4曲は前作『Boz Scaggs & Band』を作ったメンバーとサンフランシスコでレコーディングをして作られた。

このアルバムではまだ AOR 時代の Boz のサウンドを聴くことはできないが、スローなバラード (だが、ブルースではない曲) は後のヒット曲を感じさせる前触れのよう。その片鱗を感じる曲が、このアルバムには幾つか収められている。

『My Time』の収録曲で最も知られているのはオープニングを飾る『Dinah Flo』だろう。1980年の『Hits!』を始めとして、数々のベスト盤にも収録されているポップな曲だ。

個人的にはアルバムの最後を飾るタイトル曲『My Time』も、Boz の特徴ある、あの甘い雰囲気のボーカルがたっぷりと聴ける、お気に入りの曲だ。

Muscle Shoals のメンバーと作った曲と、お馴染みのサンフランシスコのメンバーと作った曲が前半は2曲ずつ交代で、7曲目以降はそれぞれ交互に登場するアルバムで、それを意識することはほとんどないが、Boz が書いたオリジナル曲で Muscle Shoals メンバーとの『Dinah Flo』と、それまでの馴染みのメンバーとの『Full-Lock Power Slide』を聴くと、それぞれのカラーが出ているようにも感じる。

この2曲、『Dinah Flo』と『Full-Lock Power Slide』は共にアップテンポな曲だが、『Slowly In The West』と『Old Time Lovin'』というちょっとスローな曲でも敢えて比べると、バックを務めるメンバーによるスタイルが微妙に違うように感じられて面白い。

こうしてバックの違いに注意して『My Time』を聴いていくと、Allen Toussaint のカバー『Hello My Lover』は Muscle Shoals のメンバーだからこそ、できた曲と思える。

続く、もうひとつの Allen Toussaint の曲『Freedom For The Stallion』は、今度はサンフランシスコでレコーディングしているが、この Allen Toussaint のカバー2曲の対比も敢えて意識をして聴くと、その違いがあるように感じられる。

バックの違いを意識しないでもアルバムとして統一感のある『My Time』は、Muscle Shoals との曲では少し品が良く (という表現がふさわしいか…?)、サンフランシスコで作られた曲にはカラっとした明るさがあるようにも感じるアルバムだ。

My Time
Dinah Flo
Slowly In The West
Full-Lock Power Slide
Old Time Lovin'
Might Have To Try
Hello My Lover
Freedom For The Stallion
He's A Fool For You
We're Gonna Roll
My Time

タグ：Boz Scaggs 1972