Eric Clapton／『Old Sock』

3月にリリースされた Eric Clapton の新作『Old Sock』もまた、最初に聴いた時と何度も聴いた後で、その印象が変化したアルバムだ。

2010年秋にリリースした前作『Clapton』と同じく、そのほとんどがカバー曲の『Old Sock』で、新曲は僅か3曲だけ。2曲目の J.J. Cale による『Angel』も Cale として未発表な曲らしいので、ここではこの『Angel』も新曲として3曲目に数えた。

前作『Clapton』では1曲だけ Eric Clapton が書いた曲があったが、今作『Old Sock』では J.J. Cale の『Angel』以外の2曲も Doyle Bramhall II ら3人が書いた曲で、この新作では Eric Clapton が書いた新曲は1つも含まれていなかった。

同梱されたブックレットを見て、こんなことに気づき、最初にひと通り全12曲を通して聴いたとき、正直あまり気になる曲は少なかった。

「ジャケットは前作より、まだ、ましかなぁ…」と思った『Old Sock』で、一度目に聴いて「いいな！」と思えた曲は新曲のひとつである『Gotta Get Over』と、Gary Moore のカバーで Steve Winwood のハモンド・オルガンをフューチャーした『Still Got The Blues』。この2曲はともにスタイルが違う曲だが、前者はこのアルバムで一番ロックな曲、そして後者は Eric Clapton なりの解釈が面白い曲に仕上がっていた。

今、Eric Clapton は『Old Sock』リリース後にライブを行なっているが、新作からは唯一『Gotta Get Over』だけが、そのセットリストに入ってプレイされているようだ。

今回の『Old Sock』で取り上げているカバーは、以前にリリースしたカバー曲がメインのアルバムと異なり、ブルースの曲ばかりとか、スタンダードな曲ばかりという選曲ではなく、古くは1930年代の曲から、1960年代の曲、そして Gary Moore の曲は1990年代というように、その範囲は広い。

今現在、Eric Clapton が興味のある曲を集め、そこにカバーではない、オリジナルの曲を幾つかレコーディングして一枚のアルバムにまとめてみた…、そんなふうに感じたアルバムだった。

なので、その選曲に変な拘りを持たず、いろいろなセッションをした結果をただ楽しむ…と思えばいいアルバムで、最初はあまり良く思えなかった Paul McCartney が参加した『All Of Me』も、1930年代という雰囲気が漂うようなコーラスがあり、これはこれで面白い曲に思えてきた。

聴いていくと、スタンダードなカバーで構成した前作『Clapton』よりレイドバックした感じのするアルバムで、同じカバー曲主体のアルバムでも、全然『Clapton』より楽しめるように思えてきた。

そう思いながらジャケットを見ると、ちょっと済ました表情の『Clapton』より、iPhone で自分撮りをしたというこのジャケットにも、ちょっとだけ親しみが湧いてきた。

Old Sock
Further On Down The Road (by Taj Mahal, 1969)
Angel featuring J.J. Cale
The Folks Who Live On The Hill (by Irene Dunne, 1937)
Gotta Get Over featuring Chaka Khan
Till Your Well Runs Dry (by Peter Tosh, 1976)
All Of Me featuring Paul McCartney (by Belle Baker, 1931)
Born To Lose (by Ted Daffan & his Texans, 1942)
Still Got The Blues featuring Steve Winwood (by Gary Moore, 1990)
Goodnight Irene (by Leadbelly, 1933)
Your One And Only Man (by Otis Redding, 1964)
Every Little Thing
Our Love Is Here To Stay (by Kenny Baker, 1938)

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