Brian May／『Another World』

ソロ・デビュー盤『Back To The Light』から約6年が経った1998年の夏、Brian May は2ndソロ・アルバム『Another World』をリリースした。

このアルバムは当初、Brian のヒーローとなった曲をカバーするコンセプトがあったが、レコーディングが長期化していく間に、そのアイデアは消滅。しかし、その名残りとして『Another World』の終盤には3曲のカバーが登場。日本版のボーナス・トラックにも2曲のカバーが収められていた。

前作『Back To The Light』のリリース後、Brian は Queen としてのラスト・アルバム『Made In Heaven』を Roger Taylor、John Deacon と3人で完成。その後、『Queen Rocks』というコンピレーション・アルバムを作り、そこには Queen として本当に最後の曲『No-One But You』があった。

そして、ようやく陽の目をみることになった Brian の2枚目のソロ・アルバムには The Brian May Band としてライブ活動していたメンバー、ドラムの Cozy Powell、ベースの Neil Murray、ギターの Jamie Moses、さらにバック・ボーカルの二人の女性 Cathy Porther と Shelley Preston が参加していた。

『Back To The Light』と同じように Brian の短いインストルメンタルで始まる『Another World』は、随所に Brian らしさがギターやボーカルで披露されているアルバム。中には初期の Queen を思わせるハードなギターをプレイする曲もあり、思わず頬が緩んでしまう。

『Another World』のレコーディングにはライブで気心の知れたメンバーの他に、多くのゲストが参加していた。

Queen 時代にライブでキーボードやギターをプレイした Spike Edney は、The Beatles もカバーした1958年の Larry Williams のカバー『Slow Down』に参加。Jimi Hendrix の1967年のアルバム『Axis: Bold As Love』収録の『One Rainy Wish』のカバーでオーケストラを指揮したのは Michael Kamen。

Queen が活動初期に前座を務めた Mott The Hoople が、1973年にリリースしたアルバム『Mott』に収録の『All The Way From Memphis』のカバーでは、その作者である Ian Hunter が参加。

元は映画のサウンドトラック用に作られたという『The Guv'nor』では、Jeff Beck がすぐそれと分かるギターを弾き、この曲では一時的にドラム Cozy Powell、ギター Jeff Beck という、第一期 Jeff Beck Grouo の再現が実現した。

また、ここ数年、Roger と Brian がライブで共演をしている Foo Fighters の Taylor Hawkins が『Cyborg』でドラムを。Eric Clapton との活動が多い Steve Ferrone もアルバム・タイトル曲でドラムを叩いていた。

今ではあまり見かける機会の少ない『Another World』はレコーディング・メンバーに目を向けると、それだけでも話題になるアルバムで、意外だが充実したアルバムだった。

しかし、今ひとつ曲に魅力が少なく、シングルも『Business』『Why Don't We Try Again』『Another World』が、それぞれカットされたが、アルバム同様、チャートを賑わすことはなかった。

Another World
Space
Business
China Belle
Why Don't We Try Again
On My Way Up
Cyborg
The Guv'nor
Wilderness
Slow Down
One Rainy Wish
All The Way From Memphis
Another World

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