Wings／『Back To The Egg』

Paul McCartney 率いる Wings は1979年6月にリリースされたこの『Back To The Egg』に伴うツアーで翌年、日本公演を行なうこと発表。当時は中学2年生で、ようやく洋楽を聴き始めた頃に訪れたいきなりの Paul 来日の情報は周囲でも大いに話題になった。しかし、今ほど情報がない中、日本公演のチケット入手は中学生にはとてもハードルが高いモノだった。

結局、チケットは入手できず、友人の中で一番の洋楽通がひとりだけ見にいくことになった。しかし、日本公演は Paul の大麻不法所持でご破算になり、そして Wings もこの後、自然消滅ということになってしまった。

日本公演中止以降、下降線まっしぐらの Paul と Wings だったが、『Back To The Egg』は日本公演の話題もあり、とても聴きこんだ Wings のアルバムだった。

1曲目の『Reception』から『Getting Closer』の流れは今聴いてもゾクゾクする展開で、一旦、間を置くような『We're Open Tonight』を挟み、再び Paul のロックンロールが聴ける『Spin It On』も『Back To The Egg』ではお気に入りの曲のひとつだった。

Wings のオリジナル・メンバーである Denny Laine 作の『Again And Again And Again』に続き、この頃の流行のパンクに Paul が挑んだ『Old Siam, Sir』。そして『Arrow Through Me』で『Sunny Side Up』と呼ばれたLPのA面は終了。

そして『Over Easy』と名づけられたB面は、大物ミュージシャンが大挙参加した Rockestra による『Rockestra Theme』でスタート。この Rockestra には Wings の5人に加え、David Gilmour(Pink Floyd)、Pete Townshend(The Who)、Hank Marvin(The Shadows)、John Bonham(Led Zeppelin)、John Paul Jones(Led Zeppelin)、Kenney Jones(Small Faces)、Ronnie Lane(Small Faces)、Bruce Thomas(The Attraction)、Gary Brooker(Procol Harum)などが参加。B面最後から2曲目の『So Glad To See You Here』でもロック版ビッグバンドによる大音量のロックンロールを聴かせてくれる。

B面は3曲目の『After The Ball / Million Miles』と『Winter Rose / Love Awake』で Paul らしいバラードをメドレー形式で披露。ラジオ・ニュースのような MC が流れる『The Broadcast』に続き『So Glad To See You Here』で一気に盛り上げた後の余韻を冷ますかのように『Baby's Request』が続く展開も、A面のオープニング同様、『Back To The Egg』の聴きどころのひとつだった。

飛ばして聴く曲がひとつもなく、全ての曲が直接繋がっているわけではないが、アルバムとしての流れがとても見事だった『Back To The Egg』で Wings はメンバーを一新、この5人で1980年代を迎えるものだと当時は思っていた。それだけに、日本公演中止後に自然消滅してしまったのはとても残念だった。そして、Paul は固定したメンバーをとらないソロの時代へと向かっていった。

『Back To The Egg』
Reception
Getting Closer
We're Open Tonight
Spin It On
Again And Again And Again
Old Siam, Sir
Arrow Through Me
Rockestra Theme
To You
After The Ball / Million Miles
Winter Rose / Love Awake
The Broadcast
So Glad To See You Here
Baby's Request

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