Pink Floyd／『The Final Cut』

きのう、Roger Waters のアルバムを紹介したことで、再び聴きたくなり、引っ張り出してきたのが、Pink Floyd が1983年にリリースした『The Final Cut』で、このアルバムがリリースされた頃は5年制高専の3年生だった。

1979年に発表された2枚組みの大作『The Wall』の続編とか、『The Wall』の3枚目のディスクと紹介された『The Final Cut』は、この頃に聴いていた1980年代の華やかなポップスとはクッキリと一線を画したアルバムだった。

この『The Final Cut』にはキーボードを担当していた Richard Wright の名前がクレジットされていない。後になって知ったことだが、既に『The Wall』制作の頃に Richard Wright はバンドを辞めさせられていたようで、『The Final Cut』の制作メンバーには Roger Waters と David Gilmour、Nick Mason の3人だけがクレジットされていた。

しかし、『The Final Cut』は Roger Waters のソロ・アルバムともいえる内容で、これまでに印象的なギター・ソロを披露してきた David Gilmour も、アルバム終盤を飾るタイトル曲『The Final Cut』と『Not Now John』の2曲くらいでしかそのプレイは聴けない。『Not Now John』で David Gilmour はボーカルも務めているが、アルバム全体の流れを支配しているのはあくまでも Roger Waters だった。

LP 発表当時、この『The Final Cut』は Holophonic(ホロフォニック)と呼ばれるシステムでレコーディングされ、曲の合間に聞こえる様々な効果音がフロントの2つのスピーカーの外側から聞こえてくるような臨場感があった。突然、飛んでくるミサイルの音を最初に聞いたときは思わず、その方向に顔を向けてしまうほどリアルな音場感があった。

当初『The Final Cut』は1982年に公開された『The Wall』のサウンドトラック盤として考えられ、『Your Possible Pasts』など数曲はその対象だった。しかし Roger Waters はこの構想を、当時起きたフォークランド紛争に触発された内容を元に変更しようとし、David Gilmour らと意見が対立。フォークランド紛争や第二次大戦に出兵した Roger Waters の父親のことが大きく影響した結果、『The Final Cut』は反戦をテーマにしたアルバムのようにも感じられた。

Roger Waters の色がますます濃くなった『The Final Cut』で David Gilmour は最終的にプロデューサーの名前からも削除された。『The Final Cut』のプロデューサーには Roger Waters と、『The Wall』でオーケストラを指揮し、Richard Wright の代わりを務めた Michael Kamen と、スタジオのエンジニアだった James Guthrie の3人がクレジットされ、この点からも『The Final Cut』は Roger Waters のソロ・アルバムという色あいが強かった。

イギリスのアルバム・チャートで『The Final Cut』は No.1 を獲得。アメリカでも最高6位を記録し、リリースから1か月後には100万枚のセールスも記録した。しかし、『The Final Cut』は商業的には1971年に発表した『Meddle』以来となる最低のセールスだったこともあり、後に David Gilmour は『The Final Cut』を商業的に失敗したと認めている。

Roger Waters の亡くなった父親のことを歌った『When the Tigers Broke Free』は1982年7月にシングルとしてリリースされ、『The Final Cut』からのシングルと紹介されたが、『The Final Cut』には収録されず、2004年に CD として再リリースされた際、『One of the Few』に続く4曲目に『When the Tigers Broke Free』は収められた。

『The Final Cut』
The Post War Dream
Your Possible Pasts
One of the Few
When the Tigers Broke Free
The Hero's Return
The Gunner's Dream
Paranoid Eyes
Get Your Filthy Hands Off My Desert
The Fletcher Memorial Home
Southampton Dock
The Final Cut
Not Now John
Two Suns in the Sunset

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