Queen／『Absolute Greatest』

9月4日の記事で紹介して以来、ようやく手元に届いた Queen の最新ベスト『Absolute Greatest』。日本盤の紹介では、ことさらに「Queen自らが厳選した究極の…」と煽っているが、John Deacon が音楽生活から身をひき、そして Freddie Mercury もいない今、「Queen自ら」というコピーには意味がない。

そして Queen は既に1981年、4人のメンバーが中心になって世界各地域別に人気のある曲をセレクトした『Greatest Hits』を発表している。日本盤のコピーにあるフレーズは全く事実に反していると(個人的には)思っている。

ここまで Queen はベスト盤として、3枚の『Greatest Hits』シリーズと『Queen Rocks』というアルバムを発表している。(Freddie の死後に発表された日本独自企画盤は除く)

これまで Queen の歴史を1枚のアルバムで紹介するベスト盤が存在していなかったことから、そういう意味で1枚モノの『Absolute Greatest』には価値があるだろう。『1枚』のアルバムと記したが、アナログ版は3枚組みなので、真の意味で『1枚』かと問われると「う～ん」と悩むところだが…。

9月4日の記事で『Absolute Greatest』は様々な形態でリリースされると記したが、今回、手に入れたのは『限定ブック・バージョン』という54ページのブックレットに、『Absolute Greatest』の CD と Brian May と Roger Taylor によるオーディオ・コメンタリーを収録した CD を付けた2枚組みだ。

表紙のハードカバーは容易に指紋がつき、扱いに慎重になってしまうが、ブックレットの中には『Radio Ga Ga』で Roger の、『One Vision』で Freddie の、『I Want To Break Free』で John の、そして『The Show Must Go On』で Brian の手書きメモが掲載されている。また『Bohemian Rhapsody』のテープを収めたボックスに Freddie がメモを記したモノも掲載されている。

また、このブックレットには20曲の英語歌詞が掲載され、その隣のページにはその曲に関連するメンバーの写真が添えられている。しかし、『Crazy Little Thing Called Love』だけは当時の写真ではなく『A Day At The Races』のジャケット写真や、その頃のメンバーの写真になっている。

Brian と Roger のコメンタリー CD は、やはり予想どおり、対訳がないと理解は難しい。日本盤『Absolute Greatest』は1枚モノしかリリースされないので、この部分の日本語訳が出回ることはこの先もないだろう。こういうところを差別化の一因として独自対訳を付けた日本語版としてリリースすれば価値があると、素人考えで思うのだが、販売元にはその様な意思はないらしい。パッケージ・メディアがより売れない時代だから、余計にこのような工夫をして欲しいと願うのだが…。

また、この限定盤のコメンタリー CD を PC に挿入すると、メールアドレスなどの情報を入力後、Queen の公式サイトの特設ページに繋がり、以下の18曲のライブ映像が見られる。古い映像は1974年の映像に始まり、一番新しい映像は1986年のブダペスト公演からの映像になっている。

◆White Queen (5:25)
Rainbow Theatre, London, England - Nov.1974
◆Killer Queen (2:17)
Earls Court, London, England - Jun. 1977
◆You Take My Breath Away
Earls Court, London, England - Jun. 1977
◆The Millionaire Waltz (3:39)
The Summit, Houston, Texas, USA - Dec. 1977
◆My Melancholy Blues (3:50)
The Summit, Houston, Texas, USA - Dec. 1977
◆Dreamer's Ball (4:01)
Pavillion De Paris, France - Feb. 1979
◆We Will Rock You (Fast)
Budokan, Tokyo, Japan - Apr. 1979
◆Let Me Entertain You (3:10)
Budokan, Tokyo, Japan - Apr. 1979
◆I'm In Love With My Car
Hammersmith Odeon, London, England - Dec. 1979
◆Now I'm Here (6:50)
Hammersmith Odeon, London, England - Dec. 1979
◆Save Me (4:12)
The Forum, Montreal, Canada - Nov.1981
◆Somebody To Love (7:43)
Milton Keynes Bowl, Milton Keynes, England - Jun. 1982
◆Tie Your Mother Down
Rock In Rio Festival, Rio De Janeiro, Brazil - Jan. 1985
◆Love Of My Life (4:52)
Rock In Rio Festival, Rio De Janeiro, Brazil - Jan. 1985
◆One Vision (4:12)
Wembley Stadium, London, England - Jul. 1986
◆In The Lap Of The Gods...
Wembley Stadium, London, England - Jul. 1986
◆We Are The Champions
Wembley Stadium, London, England - Jul. 1986
◆We Will Rock You (2:55)
Nepstation, Budapest, Hungary - Jul. 1986

どの公演かもクレジットされているので転記したが、これを見ると過去に一部は公式に出回った映像も数多く含まれている。回線の状況が思わしくなく、全てのライブ映像をまだ見ていないが、視聴期限は2010年2月28日となっている。

その思わしくない回線状況にも関わらず、特に目を惹いたのが、1979年の武道館公演の『We Will Rock You』 Fast バージョンだ。この頃のステージの特徴、通称「オーブン」と呼ばれる巨大照明がステージ上にせり上がるシーンは、ライブ映像でもゾクゾクする興奮感を味わえる。ゲイ・ファッションの Freddie (映画『クルージング』の真似?)、ホームメイド・ギターを弾く Brian と間奏部分でスポットライトを浴びる John。残念ながらドラムセットの陰に隠れて Roger の姿はあまり見えないが、それでも当時の来日公演の雰囲気が大いに楽しめる。

この18曲の映像は古くから公式に映像として残されていると言われたものばかり。特に1970年代後半の貴重な映像は、今後のライブ映像復刻版として正式リリースを期待したいところだ。

なお、『Absolute Greatest』に収められた20曲は最新リマスターとなっているが、その効果はほとんど今までの音源と違いが分からない微妙なものだった。

手元にある紙ジャケット仕様でリイシューされたアルバムの音源を使い『Absolute Greatest』を再現できるが、それぞれのアルバムに収められた音圧が統一されていないので、曲によって音量に大小がある。しかし、今回の『Absolute Greatest』ではその様なレベルの大小はないので、気軽に Queen のヒット曲を楽しみたいなら、この全20曲入りの CD はお勧めの1枚と言えるだろう。

『Absolute Greatest』
We Will Rock You
We Are The Champions
Radio Ga Ga
Another One Bites The Dust
I Want It All
Crazy Little Thing Called Love
A Kind Of Magic
Under Pressure
One Vision
You're My Best Friend
Don't Stop Me Now
Killer Queen
These Are The Days Of Our Lives
Who Wants To Live Forever
Seven Seas Of Rhye
Heaven For Everyone
Somebody To Love
I Want To Break Free
The Show Must Go On
Bohemian Rhapsody

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