TOTO／『Isolation』

TOTO が1984年にリリースした通算5枚目のアルバム『Isolation』。前作『TOTO IV』までの4枚が TOTO のアルバムでは好きというファンが多い中、この『Isolation』は意外と人気がない。

セールス面でも頂点を極めた『TOTO IV』はアメリカで300万枚を越えるセールスをあげ、全米アルバム・チャートでは最高4位を記録。グラミー賞で『TOTO IV』は Album of the Year を、シングル『Rosanna』は Record of the Year を獲得し、『TOTO IV』は Producer of the Year の栄誉にも輝いた。

商業面でもクリエイティブな面でも大成功を収めた『TOTO IV』から2年半が経った1984年の11月に『Isolation』はリリースされた。

この『Isolation』では1978年のデビュー盤『TOTO』以来、ベースを務めてきた David Hungate と ボーカルの Bobby Kimball が抜け、ベースには Porcaro 3兄弟の次男である Mike が加入。ボーカルには Survivor の『Eye of the Tiger』でバック・ボーカルを務めたこともある Fergie Frederiksen が TOTO 2代目のボーカリストに選ばれた。

バンドの顔でもあるボーカリストの変更は、バンドの方向性を一変させかねない出来事でもあるが、この『Isolation』を聴く限り Fergie への変更は、いい方向に作用したな…と、当時は感じた。

アルバム冒頭の『Carmen』は、この頃の TOTO の音楽面のリーダーでもあった David Paich と Jeff Porcaro の共作。ここで聴かれる Fergie のボーカルは、ピタリと新生 TOTO のサウンドにマッチしていた。2曲目の『Lion』は前任のボーカリスト、Bobby Kimball と David Paich の共作で、Bobby が恐らくリード・ボーカルを務めたであろうパートを見事 Fergie はこなし、何ら不安な要素は感じられなかった。

3曲目の『Stranger in Town』は再び Paich と Jeff の共作で、『Isolation』からの1stシングルにも選ばれた。ここでは Paich がリード・ボーカルを担当。コーラス部分では Fergie のハイトーンな声が冴えていた。全米チャートでは最高30位と振るわなかったが、もっとヒットするだろうとも思えた曲だった。

続く『Angel Don't Cry』は Paich と Fergie の共作で、『Isolation』からの2ndシングルに選ばれた。4曲目にしてようやく Fergie の力強いボーカルが見事なまでに発揮され、この曲も新生 TOTO を代表する名曲だと、当時は思っていた。(今も Fergie 時代の TOTO を代表する素晴らしい曲だと思っている!)

この後も Fergie はタイトル曲の『Isolation』を含め、『Mr. Friendly』と『Change of Heart』でも Paich らと曲作りを共にし、TOTO に参加した1作目からバンドに溶け込んでいた(かのように見えていた…)。

しかし、Fergie のボーカルが聴けるのはこの『Isolation』のみで、約2年後にリリースされた『Fahrenheit』でボーカルは Joseph Williams に交代してしまう。Fergie は1984年暮れに公開された大作映画『Dune』のサウンドトラックにもボーカルとして参加していたが、『Isolation』で見られたような力強いボーカルを聴くことはほとんどない。

この頃の TOTO には Fergie 以外のボーカリストとして David Paich と Steve Lukather がいたが、Fergie の声をバンドに活かしきれなかったことは今でも残念に思う。3作目の『Turn Back』とまた少し違うハードな TOTO の一面が Fergie で確立できるとも思っていた。

Fergie の次のボーカリスト Joseph Williams を、TOTO では一番のボーカリストに推す意見も多いが、Fergie のボーカルを推す(隠れた?)ファンも多いと、密かには思っている。

『Isolation』
Carmen
Lion
Stranger in Town
Angel Don't Cry
How Does It Feel
Endless
Isolation
Mr. Friendly
Change of Heart
Holyanna

タグ：TOTO 1984