Bruce Springsteen／『Human Touch』

The E Street Band を解消した Bruce Springsteen が『Tunnel Of Love』の後に同時リリースした2枚のアルバムのうちのひとつがこの『Human Touch』で、10曲入りの『Lucky Town』と同時にリリースされた Bruce にとって1990年代に入って初めてのアルバムだった。

シングルは『Human Touch』と『57 Channels (And Nothin' On)』の2枚がカットされ、後者はアルバム『Nebraska』を連想させるような内容だった。

『Tunnel Of Love』から5年も待たされたアルバムだっただけに大いに期待をしたアルバムで、過去の Bruce のアルバムと同じく、『Gloria's Eyes』や『Roll Of The Dice』、『Man's Job』などシングル・カットされなかったが好きな曲が多く含まれていたアルバムでもあった。

『Lucky Town』と合わせて曲数は24曲にもなるので、一時は『The River』以来の2枚組としてリリースされるかもと噂されたが、こうしてリリースされた2枚を別々に聴くと、それぞれ異なる印象を持つアルバムに感じられ、1枚ずつ別のアルバムとしてリリースしたことは正解だったのかもしれない。

バンドとしての The E Street Band は解消したが、このアルバムには1970年代中盤からの友人である Roy Bittan が参加していて、また The E Street Band の初期に活動を共にしていた David Sancious も『Soul Driver』と『Real World』の2曲で参加していた。

Ry Cooder のアルバムでボーカルを務めていた Bobby King が参加した『Man's Job』もこの『Human Touch』では好きな曲で、間奏のギターもライブできっと映える曲だと思った。

続く『I Wish I Were Blind』で聴かせる Bruce のボーカルは『Roll Of The Dice』などのロックな曲から一転、語り部としての Bruce のもうひとつのボーカリストの面がよく表れていて、この曲も『Human Touch』では好きな曲だった。

また The E Street Band の Max Weinberg に代わってこのアルバムでドラムを叩いているのは TOTO の Jeff Porcaro と、この組み合わせも大いに意外だった。

上に挙げた曲以外にも好きな曲が多い『Human Touch』は、The E Street Band がいない1980年代後半から1990年代の Bruce のアルバムの中では1番好きなアルバムかもしれない。

だが、セールス面では意外に伸びなかった『Human Touch』は前作『Tunnel Of Love』が全米チャートで No.1 を獲得して300万枚のセールスを記録したが、『Human Touch』は全米チャートで最高2位止まり。売上げは100万の大台に乗ったが『Tunnel Of Love』ほどのセールスは上げられなかった。

しかし同時リリースした『Lucky Town』も100万枚のセールスをあげて全米チャートで最高3位を記録したので、もし1枚ずつ別々の時期にリリースされていれば、それぞれがチャート上でもセールス面でも『Tunnel Of Love』と同じような結果を残せたかもしれない。

『Human Touch』
Human Touch
Soul Driver
57 Channels (And Nothin' On)
Cross My Heart
Gloria's Eyes
With Every Wish
Roll Of The Dice
Real World
All Or Nothin' At All
Man's Job
I Wish I Were Blind
The Long Goodbye
Real Man
Pony Boy

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