Billy Joel／『The Bridge』

1983年の『An Innocent Man』以来、ほぼ3年ぶりにリリースされた Billy Joel の通算10枚目のスタジオ・アルバム『The Bridge』。この間にはキャリア総括するを2枚組の『Greatest Hits - Volume I & Volume II』が1985年9月にリリースされ、2曲の新曲を含んだベスト盤はアメリカだけで1000万枚以上のセールスをあげ、2つの新曲『You're Only Human (Second Wind)』と『The Night Is Still Young』はそれぞれ最高9位と34位をマークした。

ベスト盤の翌年、1986年にはコメディ映画『Ruthless People(邦題:殺したい女)』に『Modern Woman』を提供。これは全米チャートで最高10位を記録した。(Danny DeVito と Bette Midler のこのコメディは必見!)

そして Billy は新曲『A Matter Of Trust』でピアノではなくギターを抱えて登場。それまでのピアノ・マンのイメージを一新したこの曲は『Modern Woman』に続いて全米チャートで最高10位を記録。そして『Modern Woman』や『A Matter Of Trust』を含む新作『The Bridge』が届けられた。

『A Matter Of Trust』の PV で Billy の弾く力強いギターには当時大いに驚かされた。これほどの変化は1980年の『Glass Houses』以来のことだった。

2枚組のベスト盤でそれまでのキャリアに一区切りをつけ、新たな第2章へと続く『架け橋』という意味がこの『The Bridge』というタイトルには込められているのではないかとも当時は言われた。

『The Bridge』は Billy のアルバムには珍しく多くのゲストが参加したアルバムでもあった。『Baby Grand』では Billy の尊敬する Ray Charles とのデュエットを披露し、この曲では Ray Charles がピアノも弾いていた。

『Code Of Silence』では Cyndi Lauper がライターにクレジットされ、その特徴ある声が Billy のボーカルと共にフューチャーされていた。『The Bridge』の最後を締める『Getting Closer』では Steve Winwood がハモンド・オルガンを弾いていた。Billy にいろいろな影響を与えたアーティストとの共演もこの『The Bridge』では話題になった。

アルバムのトップを飾る『Running On Ice』では Billy の弾くピアノではなく、外部ミュージシャンによるシンセサイザーの音が派手に鳴り響き、まるで『Pressure』が初めて登場したときのことを思い起こさせた。

続く『This Is The Time』はこれまでの路線を継承するかのようなバラードで、この曲はアダルト・コンテンポラリー・チャートで No.1 をマーク。Ray Charles とのデュエット『Baby Grand』も続いてシングル・カットされ、再びアダルト・コンテンポラリー・チャートで最高3位のヒットを記録した。

『The Bridge』のB面は派手なビッグ・ホーンをフューチャーした『Big Man On Mulberry Street』で始まる。この曲はストーリーテラーとしての Billy の一面がまだ健在と思わせる曲でもあった。

売上の面では明らかに『An Innocent Man』に及ばなかった『The Bridge』だが、それでも全米アルバム・チャートで最高4位を記録し、200万枚以上を売り上げた。B面2曲目の『Temptation』では Billy のピアノやボーカルに以前と変わらない力強さと優しさがあった。シングルにもならず、豪華ゲストもいなかった『Temptation』だが、『The Bridge』では Billy らしさが満ちていた曲で、とても好きな曲だ。

The Bridge
Running On Ice
This Is The Time
A Matter Of Trust
Modern Woman
Baby Grand
Big Man On Mulberry Street
Temptation
Code Of Silence
Getting Closer

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