Paul McCartney／『All The Best!』

最近、Paul McCartney や Wings のアルバムのジャケット違いを詳細に紹介している MASA さんのブログに触発され、こちらも Paul が The Beatles の解散以降に2枚目のベスト盤としてリリースした『All The Best!』を紹介!

Paul のベスト盤は1978年にリリースされた『Wings Greatest』が過去にあり、このベスト盤には当時、LP 未収録だったシングル曲が多く収められ、全12曲中5曲がアルバム初収録だった。以来、この5曲が聴ける『Wings Greatest』は単なるベスト盤という括りを超えて、他の Paul のスタジオ・アルバムと同じくらいに必聴のアルバムだった。

しかし、その立場もこの1987年にリリースされた『All The Best!』によって脅かされることになった。『All The Best!』には『Another Day』、『Live And Let Die』、『Mull Of Kintyre』の3曲が収められ、『Wings Greatest』でしか聴けない曲はわずか『Junior's Farm』と『Hi, Hi, Hi』の2曲だけになってしまった。

ところが『All The Best!』には収録曲の異なる2つの盤が存在し、先の3曲が聴けるのはイギリス盤(写真上)で、日本でリリースされた『All The Best!』もこれに沿っていた。しかし、アメリカ盤『All The Best!』(写真右)には『Wings Greatest』でしか聴けなかった『Junior's Farm』が含まれ、『Wings Greatest』以降のシングルでやはりアルバム未収録だった『Goodnight Tonight』に加え、さらには『Coming Up』のライブ・バージョンまでもが収録されていた。

それでも『All The Best!』には『Hi, Hi, Hi』の1曲だけはイギリス盤にもアメリカ盤にも収録されず、『Wings Greatest』でしか聴けないレアな曲だった。

『All The Best!』には『Wings Greatest』でなぜか1曲も取り上げられなかった『Venus And Mars』 からも『Listen To What The Man Said』が両方に収録された。この曲は全米チャートで No.1 を獲得し、もしアメリカ盤だけに収録されていたら間違いなくアメリカ盤の価値は上がっていただろう(と、思う…)。

Stevie Wonder とのデュエット『Ebony And Ivory』と、Michael Jackson とのデュエット『Say Say Say』は共に収録され、この点では両者互角。なぜかあまり印象の少ない(残らない?)『C Moon』と『No More Lonely Nights』も共に収録されたが、この2曲はファンが思う以上に Paul のお気に入りの曲なのだろうか…?

他に『All The Best!』の特徴を挙げれば、イギリス盤にはこの時点での新曲『Once Upon A Long Ago』があり、子供向けの番組に提供した『We All Stand Together』も含まれていた。だが、アメリカ盤にしかない『Goodnight Tonight』や『Coming Up』のライブ・バージョンに比べるとこの2曲のインパクトは弱かった(と、思う)。しかし新曲『Once Upon A Long Ago』はこの『All The Best!』でしか聴けない曲だった。

ここまで比べると、イギリス盤とアメリカ盤の『All The Best!』それぞれに長所があり、そして短所がありと、甲乙つけ難い状況で、最終的には双方を購入するということになった。

日本盤と同じ曲が収録されていたのでイギリス盤『All The Best!』を改めて購入することはなかった。国内盤は音質が良いとされたゴールド CD がリリースされたので貴重と思いこちらを購入。普通の CD に比べて高音に硬い感じがなく、アナログ盤に似た雰囲気がこのゴールド CD にはあった。

後で知ったことだが、イギリス盤の『All The Best!』には2枚組の LP もあり、これには CD より多い、『Maybe I'm Amazed』、『Goodnight Tonight』、『With A Little Luck』の3曲が収録され、全20曲という構成だった。

『Wings Greatest』を凌駕しそうで、そうでなかった微妙な『All The Best!』だったが、2001年には Paul のソロ活動のベスト決定版(?!)ともいえる2枚組の『Wingspan』がリリースされ、『Wings Greatest』と『All The Best!』は共に貴重なベスト盤という立場を譲ることになった。

All The Best!

【UK盤】 Jet Band On The Run Coming Up Ebony And Ivory Listen To What The Man Said　 No More Lonely Nights Silly Love Songs Let 'Em In C Moon Pipes Of Peace Live And Let Die Another Day Once Upon A Long Ago Say Say Say My Love We All Stand Together Mull Of Kintyre

【US盤】 Band On The Run Jet Ebony And Ivory Listen To What The Man Said No More Lonely Nights Silly Love Songs Let 'Em In Say Say Say Live And Let Die Another Day C Moon Junior's Farm Uncle Albert/Admiral Halsey Coming Up (Live At Glasgow) Goodnight Tonight With A Little Luck My Love

タグ：1987 Paul McCartney

コメント 2

おっ、MCMLXV_65さんもこのアルバムを取り上げましたか＾＾。
私は「GREATEST」は買わなかったのですが、「ALL THE BEST」には「Hi, Hi, Hi」が入っていればよかったのになあ、と思います。
まあ「WINGSPAN」が出た今となってはどっちでもいいですけど（笑）。

「C.Moon」はポールが好きな曲らしく、'70年代の初期のライヴやTVスペシャルではよく演奏してました。
一見地味な曲ですが、さりげなくレゲエを取り入れるし、個人的には私も好きな曲ですね。

あとは未だにCD化されていない曲などを集めたレア音源集みたいなものが出ればいいんですけどね。
by MASA (2010-05-20 23:20) 

MASAさんの記事を見て、久々に2種類の『All The Best!』をじっくり眺め、じっくり両方を通して聴きました。『Hi, Hi, Hi』と『C Moon』って、同じシングルのカップリング曲という関係でしたが、『Hi, Hi, Hi』は最近のライブでもプレイされない一方、『C Moon』はよくプレイされていますよね。やっぱり、Paulのお気に入りなんでしょうかね。

レア曲集としてもう1枚という案には私も1票です。最近のリイシューではボーナス扱いとして収録されたりもしていますが、そういう曲を、ぜひ1枚(or2枚?)に集めて欲しいですよね!
by MCMLXV_65 (2010-05-21 00:03)