Van Halen／『Van Halen III』

Van Halen はアルバム『5150』以降の3枚で新たなファンを獲得し、Sammy Hagar と Van Halen の関係は長く続くと思われていた。だが、突然 Sammy Hagar の脱退が報じられ、一時的には初代ボーカルの David Lee Roth がバンドに復帰も果たした。

そして、1995年リリースのアルバム『Balance』から3年ぶりとなるアルバム『Van Halen III』には3代目のボーカルとしてボストン出身のバンド Extreme のボーカル Gary Cherone が迎えられた。

アルバムのタイトルはシンプルに『Van Halen III』。バンド名を冠したアルバムはデビュー盤と続く2ndアルバム以来のことで、Gary Cherone を迎えた Van Halen の第3章を示すものでもあった。

このメンバーで1998年4月から南半球を皮切りにワールド・ツアーも組まれ、北米、欧州、中南米を回った後に日本公演も行われ、この時の最終公演地である横浜アリーナで3代目 Van Halen を幸運にも見ることができた。

Sammy Hagar 時代の来日公演も東京ドームという広い舞台で見ていたが、Gary Cherone 時代のライブはそれに比べるととてもコンパクトになった印象で、悪く言えばこじんまりとしたステージで、Gary Cherone の動きは全く Van Halen らしくなかった。

Gary Cherone の声質は Sammy Hagar に似ていたので『5150』以降のアルバムからのヒット曲に大きな違和感はなかったが、やはり実際のステージを目の当たりにすると Sammy Hagar との違いは明らかで、クネクネとカラダを動かす Gary Cherone のパフォーマンスは Van Halen というバンドに全然似つかわしくなかった。

『Van Halen III』というアルバムの印象は何の先入観も持たずに聴くと、Sammy Hagar のボーカルとあまり違いが感じられない。だが、勢いは明らかに失速した感があり、David Lee Roth 時代の勢いはさらに感じられないアルバムだった。

『Van Halen III』は『5150』以降から続く4枚連続全米 No.1 の記録も途絶えて最高4位止まりだったが、アルバムの内容から考えるとこれは上出来の結果にもみえた。シングル・ヒットは『Without You』が全米ロック専門チャートでトップになった以外、あまり目立ったヒットもなかった。

アルバムには5分を越す長い曲がずらっと並んでいたが、まとまりに欠けて Eddie Van Halen のウリであるギター・ソロもそれまでのアルバムに比べると勢いが弱かった。それは兄の Alex のドラムにも言えたことで、あの特徴あるパワフルなスタイルがすっかり影を潜めていた。

オリジナル・メンバーの Michael Anthony はこれまで同様、各曲にその名前がクレジットされていたが、後にこのアルバムで関わったのは『Without You』と『One I Want』、『Fire In The Hole』の3曲のみと明らかになり、他の曲でベースを弾いていたのは Eddie だった。

その Eddie がボーカルを披露する最後の曲『How Many Say I』は、一瞬 Pink Floyd をも思わせるような曲で、それまでの Van Halen にはないタイプの曲だった。

と、明らかにこの頃の Van Halen はその行く先が定まっていない印象で、予想どおり、Gary Cherone はこの1枚限りでバンドを離れた。そして、後のベスト盤『The Best of Both Worlds』でも、このメンバーによる曲は1曲も取り上げられなかった。

これ以降 Van Halen のスタジオ・アルバムは現在に到るまで1枚もリリースされていない。Eddie を始めとするメンバーの体調問題もあり、バンドの継続が難しい Van Halen だが、期待の新作はいつになったら聴けるのだろうか。

Van Halen III
Neworld
Without You
One I Want
From Afar
Dirty Water Dog
Once
Fire In The Hole
Josephina
Year To The Day
Primary
Ballot Or The Bullet
How Many Say I

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