Christopher Cross／『Christopher Cross』 [CD]
ジャケットに片足を上げたピンクのフラミンゴの絵が描かれ、アーティスト名の『Christopher Cross』があるだけのアルバムがリリースされた1980年前後は、アーティストやアルバムの情報が圧倒的に不足していた時代で、このアルバムで聴ける Christopher Cross の声に「どんな容姿のアーティストが歌っているんだろう?」と、勝手な想像を膨らませていた。このアルバムのレコーディングにはアメリカの西海岸をメインに活躍していたアーティストが多数参加し、その中には Eagles の Don Henley や The Doobie Brothers の Michael McDonald の名前があり、他にもボーカルに J.D. Souther、Valerie Carter、ギターに Larry Carlton や Jay Graydon の名前もあった。
わずか9曲で40分足らずの『Christopher Cross』には、西海岸出身の若者で長身で適度に日焼けしたアーティスト象を(本当に…)勝手に描いていた。
ところが、情報が徐々に明らかになるにつれ、Christopher Cross という人物はテキサス州サン・アントニオというアメリカでも南部の出身だということが判明。さらに1951年3月生まれということから、このアルバムがリリースされたときは28歳と、結構な年を重ねていたことも明らかになっていった。
アーティストに関する情報が今と比べて全く少なかった時代に突如表れたこの『Christopher Cross』というアルバムからは『Ride Like The Wind』や『Sailing』など4枚のシングルがカットされ、前者は全米チャートで2位を、後者は No.1 をそれぞれ記録し、『Sailing』はその後のグラミー賞で Song of the Year と Arrangement of the Year にも選出された。
アルバムからはこの2曲以降も『Never Be The Same』が全米チャートで最高15位を、アルバムのトップを飾る『Say You'll Be Mine』が最高20位を記録し、『Never Be The Same』は Adult Contemporary チャートで No.1 も記録した。
正体を(意図的に?)隠したアルバム『Christopher Cross』は全米チャートで最高6位を記録。1981年のグラミー賞では Album of the Year に輝き、シングルの『Sailing』は最も優れたシングルの証である Record of the Year と、優れた楽曲に贈られる Song of the Year の2つを受賞。さらにキャリアで一度しか受賞のチャンスがない新人賞の Best New Artist に Christopher Cross は選ばれた。
グラミー賞で主要4部門を一度に全て獲得したアーティストは後にも先にもこの Christopher Cross だけで、未だにこの快挙は破られていない。
Christopher Cross の勢いは1981年の映画『Arthur』に提供したテーマソングの『Arthur's Theme (Best That You Can Do)』でも続き、この曲はアカデミー賞の Best Song に、ゴールデン・グローブ賞の Best Original Song にも選ばれた。
1981年の賞レースを総ナメにした Christopher Cross のデビュー盤『Christopher Cross』には残念ながら『Arthur's Theme (Best That You Can Do)』は CD 時代になっても追加されなかった。だが、今でもこのアルバムはここにある9曲以外、余計な要素がいらない完璧なアルバムだと思う。
Christopher Cross
Say You'll Be Mine
I Really Don't Know Anymore
Spinning
Never Be The Same
Poor Shirley
Ride Like The Wind
The Light Is On
Sailing
Minstrel Gigolo
2010-09-18 19:21
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コメント(2)
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こんばんは。
このアルバム、リマスター化されませんね（苦笑）
もちろん内容は素晴らしいの一言ですが！
ジェイ・グレイドンとラリー・カールトンのリード・ギター競演盤としても楽しめますよね。
by どうぷ (2010-09-19 01:03)
そうなんですよね、2009年にはRhinoからもリイシューされたこのアルバムですが、リマスターの表記はなく古い音源がいまだ使われているようでした。
今、amazonなどでは1000円前後と安い価格で手に入りますので、もしまだ聴いたことがないのなら、ぜひ、聴いて欲しい一枚だと思います!!
by MCMLXV_65 (2010-09-19 11:16)