Madonna／『Erotica』

Madonna の『Like a Prayer』に続く通算5枚目のスタジオ・アルバム『Erotica』は、同時期にリリースされた写真集の『SEX』と共に大きな論争の的になった。過激な歌詞の内容や、シングル・カットされた曲の PV もアルバムのタイトル同様エロティックな内容で、それまでの Madonna のイメージを覆す大胆な路線変更はファンの間でも賛否両論だった。

1stシングルに選ばれたアルバム・タイトル曲の『Erotica』はレコードのスクラッチ・ノイズを含む曲で、Madonna のそれまでのどのシングルとも似ていない曲だった。敢えて似ている曲を探すと1990年のベスト盤『The Immaculate Collection』にある Lenny Kravitz が手掛けた新曲『Justify My Love』だろうか?

『Erotica』の PV は Madonna の SM 風なコスチュームなどがあり、放送局によっては放送禁止扱いにされた。音楽としての話題より過激な映像が話題になった『Erotica』は全米チャートで最高3位止まりだったが、全米クラブ・チャートでは『Justify My Love』に続き No.1 を記録。アルバム『Erotica』から唯一ゴールド・ディスクを獲得したシングルになった。

1stシングル『Erotica』でそれまでのイメージを大きく変えたことをアピールし、歌詞の内容がより具体的な表現になったアルバム『Erotica』は、Madonna のアルバムで初めて Parental Advisory のステッカーが貼られることにもなった。

誰にでも人気があるポップな存在から、よりコアな、よりクラブ・ミュージックな存在に転換を図った『Erotica』だったが、2ndシングルに選ばれた『Deeper and Deeper』のように従来のポップなイメージを持つ曲もあった。1stシングルの『Erotica』より Madonna らしい曲だった『Deeper and Deeper』は全米チャートで最高7位を記録した。

その後もアルバムからは『Bad Girl』や『Fever』、『Rain』、『Bye Bye Baby』がシングル・カットされ、『Fever』は全米クラブ・チャートで再び No.1 を記録。『Rain』は PV が MTV Video Music Awards の Best Art Direction と Best Cinematography にも選ばれた。

『Erotica』に収められた曲はシンプルに1つの単語だけの曲が多かったが、従来どおりのポップ路線な曲に始まり、『Erotica』に代表されるような大きく路線変更を狙った曲、クラブ・ミュージックにシフトした曲などがあって、1つのテーマで括ることのできないアルバムだった。しかも1曲目の『Erotica』から続くアルバム前半はいい曲が揃っていて、シングルに選ばれた曲もあったので、決して退屈な印象はなかった。

だが、セールス面をみるとそれまでのアルバムと同じような結果には至らず、全米アルバム・チャートは最高2位どまりで、『Like a Virgin』以降続けてきた連続 No.1 も途絶えた。アメリカでは売上枚数の面でも前作『Like a Prayer』の400万枚に対して『Erotica』はその半分の200万枚に留まり、世界中の総売上枚数でも軒並み各国のチャートで No.1 を記録した前作の半分以下のセールスしか記録できなかった。

この『Erotica』というアルバムは Madonna のキャリアの中では明らかに転機となったアルバムだった。自らが起こしたレーベル Maverick からの初めてのアルバムでもあり、このアルバムでいろいろな試みを経たことで新しい Madonna の一面が剥き出しにもなった。そう考えると Madonna の長いキャリアの中でとても重要なアルバムだったと言えるだろう。

Erotica
Erotica
Fever
Bye Bye Baby
Deeper and Deeper
Where Life Begins
Bad Girl
Waiting
Thief Of Hearts
Words
Rain
Why's It So Hard
In This Life
Did You Do It?
Secret Garden

タグ：Madonna 1992