Various Artists／『America: A Tribute To Heroes』

2001年9月11日の後、アメリカでは音楽やテレビ/映画で活躍するアーティストが素早い行動を示した。この『America: A Tribute To Heroes』もその行動の1つで、テレビはネットワークの垣根を超え、CM も一切入らない番組をわずか10日後の9月21日に放送した。

どこで行われたか詳細は明らかにならなかったが、ロサンゼルスとニューヨーク、そしてロンドンに設けられたシンプルなステージをバックに多くのアーティストが登場。過剰な装飾を一切排したステージから発せられる音楽はとても強いメッセージを持っていた。

演奏の合間には映画やテレビで活躍する俳優らが登場してコメントを。それ以外にも多くの著名人がスタジオでの寄付金を受け付ける電話に直接応対した。

3箇所のステージに登場したアーティストは21組。観客からの声援もないステージだったが、普段のライブで見せる姿と違う一面にはとても惹きつけられた。この活動には最終的に2億ドルもの寄付があったという。

このときのステージは2001年暮れに CD と DVD もリリースされた。2枚組の CD には登場した21組のアーティストのステージが収録され、聴き慣れた曲をシンプルに歌い上げたステージは目の前に迫ってくるような臨場感があった。

DVD は国内盤もリリースされ、ステージの合間に多くの著名人が語るコメントを字幕付きで見ることができた。音楽で伝わるメッセージよりダイレクトに響くこれらのコメントにも一切の虚飾がなく、深く心に刻まれるコメントが多かった。

こういったステージには多くの言葉や飾りは必要ない。シンプルになればなるほど、曲や言葉に込められた思いはより深く伝わってきた。

2001年9月11日と2011年3月11日を比べることに意味はないし、アメリカと日本の大小を比べても意味はない。ただ『America: A Tribute To Heroes』のような行動によるメッセージは遠く離れた日本にいても伝わってきた。

静かに想いを馳せることも重要だが、動くこと、前に進むことで何かができるということを、2001年9月11日以降に起きた多くの活動では教えられた。

今、いろいろな行動を控える『自粛』が広がっている。だが、それが本当にいい行動なのか分からない。行動しなければそれに伴う多くのことも回っていかない。中には現状にふさわしくない行動もあるかもしれないが、何もかも『すべきではない』という考えは、本当に今あるべき姿なのだろうか。

今、行動できる範囲ですべきこと精一杯する。それが今、一番大切なことではないだろうか。

America: A Tribute To Heroes
My City Of Ruin by Bruce Springsteen
Love's In Need Of Love Today by Stevie Wonder with Take 6
Walk On by U2
There Will Come A Day by Faith Hill
I Won't Back Down by Tom Petty & The Heartbreakers
Hero by Enrique Iglesias
Imagine by Neil Young
Someday We'll All Be Free by Alicia Keys
Wish You Were Here by Limp Bizkit with John Rzeznik
New York State Of Mind by Billy Joel
I Believe In Love by Dixie Chicks
Everyday by Dave Matthews
Redemption Song by Wyclef Jean
Hero by Mariah Carey
Livin' On A Prayer by Bon Jovi
Safe And Sound by Sheryl Crow
Fragile by Sting
Long Road by Eddie Vedder
Bridge Over Troubled Water by Paul Simon
God Bless America by Celine Dion
America The Beautiful by Willie Nelson

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