Pink Floyd／『Relics』

Pink Floyd のアルバムはこのブログでこれまでに多く取り上げてきたが、その多くは1973年の『The Dark Side Of The Moon』以降の Roger Waters を中心に作られたアルバムや、1987年の『A Momentary Lapse of Reason』以降の David Gilmour を含めた3人 Pink Floyd 期のアルバムばかりだった。

このふたりがメインになるより以前のアルバム、オリジナル・メンバーで極初期にしか在籍していなかった Syd Barrett 時代のアルバムや曲は、上記のふたりを中心にしたアルバムと全く異なる雰囲気で、その在籍時間の短さからも聴く機会の少ないアルバムだった。

「A Bizarre Collection Of Antiques & Curios」と副題のような言葉もあるこの『Relics』は1971年にリリースされた編集盤で、ここには1967年リリースのデビュー盤『The Piper At The Gates Of Dawn』からの曲や、1969年にリリースされた映画『MORE』のサウンドトラック盤からの曲に加えて、この当時にはシングル盤でしか聴けなかったレアな曲が収められていた。

『Relics』は1970年に全英アルバム・チャートで No.1 を記録した『Atom Heart Mother』に次いでリリースされ、同チャートで最高32位まで上昇した。(全米チャートでは最高153位止まり)

『Relics』には Syd がボーカルの『Arnold Layne』や『See Emily Play』という初期のシングルがある。これらの曲は Waters、Gilmour 時代とかなり違う雰囲気の曲で、この当時が好きな Pink Floyd ファンも少なくないが、個人的にはかなり戸惑ってしまう曲だ。

Syd がボーカルの曲は他にもデビュー盤から2曲あるが、その他の曲、『Julia Dream』『Cirrus Minor』『The Nile Song』の3曲では Gilmour がボーカルを担当している。『Julia Dream』は1968年のシングル『It Would Be So Nice』でしか聴けない曲だった。

1970年代後半から Pink Floyd のボーカルで圧倒的な存在感を放つ Roger のボーカルは『Biding My Time』の1曲のみで、この曲は当時未発表の曲だった。

『Remember A Day』と『Paintbox』の2曲では今は亡き Richard Wright がリード・ボーカルを務め、後者は1967年のシングル『Apples and Oranges』のB面に収められたレアな曲だった。1960年代後期からこの『Relics』の頃まで Pink Floyd の幻想的とも思える曲では Richard の弾くピアノやオルガンが重要な役割を担っていたが、そのボーカルもまた他の3人に負けない独特な雰囲気を持っていた。

独特な雰囲気と言えば『Relics』のジャケットもまたそんな感じのするモノで、これはドラムの Nick Mason によるデザインだった。『Relics』には複数の異なるジャケットが存在し、CD でリリースされた際にはオリジナルのイラストを実在のアイテムで具現化した画像が使われもした。

オリジナルのイラストを用いた『Relics』は2001年にジャケット表面の微妙なテクスチャーも再現した紙ジャケット仕様でリイシューされ、その時に手に入れたが、なかなか聴く機会の少ないアルバムだ。

『Relics』はかなり気分が落ち込んでいるときに聴くことがある。今がまた、そのようなときなのだが、元気になるというより、落ち込んだ気分を穏やかにさせるようなアルバムだ。しかし、こればかり聴いていると現実から徐々に遠ざかるような気分にもなる、個人的には危険なアルバムでもある。

Relics
Arnold Layne
Interstellar Overdrive
See Emily Play
Remember A Day
Paintbox
Julia Dream
Careful With That Axe, Eugene
Cirrus Minor
The Nile Song
Biding My Time
Bike

タグ：1971 Pink Floyd