Veruca Salt／『Eight Arms To Hold You』

アルバム・タイトル『Eight Arms To Hold You』は The Beatles の映画『Help!』の仮題。そしてバンド名の Veruca Salt は『Charlie and The Chocolate Factory』という子供向けの本の中のキャラクターと、ジャケットのイラストも含めてどんなスタイルのバンドなのか全く想像のつかないアルバムだが、この中にある『Volcano Girls』は一度は聴いたことがあるという方が多いかもしれない。

Veruca Salt は1993年にイリノイ州シカゴで結成されたバンドで、メンバーは Louise Post と Nina Gordon という二人の女性がギターとボーカルを担当し、Nina の兄 Jim Shapiro がドラム、Steve Lack がベースの4人編成で、この『Eight Arms To Hold You』にある14曲は Louise が6曲を、Nina が8曲を書いていた。

そしてこのアルバムのプロデュースには、この頃 Bon Jovi や Metallica を手がけていた Bob Rock の名前があり、ますますこの Veruca Salt というバンドの素性がそのクレジットだけでは想像がつかなかった。

だが『Eight Arms To Hold You』の中にある曲は激しいギターが鳴り響くパワー・ポップに通じる曲が多く、そこに Louise と Nina の女性ボーカルがかぶるガールズ・ロックにも分類されるようなスタイルだった。

Veruca Salt はオルタナティブにも分類されるが、Billboard 誌の Modern Rock Tracks チャートで最高8位まで上昇したシングル『Volcano Girls』に代表されるように、そのスタイルは同郷の Cheap Trick をも彷彿させた。

メンバーがバンジージャンプのロープに吊るされ上下する PV ではフロントの二人、黒髪の Louise と金髪の Nina の容姿にも惹かれるが、この二人の弾く豪快なギターも好きになり、PV を見てアルバムの他の曲も聴きたくなってこの『Eight Arms To Hold You』を手に入れた。

アルバムからは他に『Shutterbug』と『Benjamin』もシングル・カットされ、プロモーション向けシングルとして『The Morning Sad』と『Straight』もリリースされたが『Volcano Girls』以上のシングル・ヒットは生まれず、『Eight Arms To Hold You』も全米チャートでは55位が最高だった。

しかし Cheap Trick みたいなパワー・ポップな面と、The Bangles のようなガールズ・ロックなスタイルを合わせ持った Veruca Salt は Louise と Nina というフロントふたりのキャラクターも含め、すぐにお気に入りのバンドになった。

この頃、女性がフロントにいるバンドとしては Courtney Love 率いる Hole があり、その Hole は1998年に『Celebrity Skin』をリリースした。Veruca Salt の結成は Hole のデビュー盤の後だったから Hole の影響を受けているように思えるが、Veruca Salt の『Eight Arms To Hold You』は Hole の『Celebrity Skin』に影響しているようにも思える。

Veruca Salt は『Eight Arms To Hold You』のリリース直後にドラムの Jim が辞め、1998年には Nina も Veruca Salt を去り、ソロ活動に転向してしまう。Louise はその後もバンドに残り、2006年にはアルバム『IV』をリリースした。

オルタナティブの括りで埋もれさせてしまうにはもったいない Veruca Salt の『Eight Arms To Hold You』は、パワーポップが好きで The Bangles のような曲が好きな方には一度は聴いてほしいお勧めのアルバムだ。

Eight Arms To Hold You
Straight
Volcano Girls
Don't Make Me Prove It
Awesome
One Last Time
With David Bowie
Benjamin
Shutterbug
The Morning Sad
Sound Of The Bell
Loneliness Is Worse
Stoneface
Venus Man Trap
Earthcrosser

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